ストーリーそのものだけでなく、歌や踊りなど見どころ満載の舞台芸術、ミュージカル。 様々な作品があって、何から観たらいいか迷ってしまう方も多いはず。
そこで今回は、ミュージカルの作品選びに迷ったらぜひ観てほしい、世界四大ミュージカルと称される名作をご紹介。
世界中で上演され親しまれている、4作品の特徴とあらすじについて解説していきます。
いずれの作品の劇中歌も、一度は聞いたことがあるような名曲ばかりです。初めての観劇にもぴったりなので、ぜひご覧ください!
- 1. レ・ミゼラブル (Les Misérables)
- 2. オペラ座の怪人 (The Phantom of the Opera)
- 3. ミス・サイゴン (Miss Saigon)
- 4. キャッツ (Cats)
- これらを観るには?
- あなたの気になる作品はありましたか?
- 出典・参考
1. レ・ミゼラブル (Les Misérables)
引用:TohoChannel(東宝株式会社演劇部門の情報専門チャンネル)
あらすじ
ヴィクトル・ユゴーの小説を原作に、19世紀のフランスを舞台に繰り広げられる壮大で複雑なヒューマンストーリー。小説は、日本では『ああ無情』の名で知られています。
主人公ジャン・バルジャンは、姉の子供たちのためにパンを盗んだ罪で19年間服役し、仮釈放後も社会から冷遇を受けることに。しかし、善良なミリエル司教との出会いをきっかけに改心し、新たな人生を歩み始めます。
その後、工場経営者として成功し、市長にまで上り詰めます。一方、彼の工場で働いていたファンティーヌは、娘コゼットの養育費を稼ぐために苦労していましたが、解雇され、最終的には病に倒れてしまいます。彼女は死の間際、娘コゼットをジャン・バルジャンに託します。
ジャン・バルジャンはコゼットを引き取り、彼女を愛情深く育てますが、執拗に追い続ける警察官ジャベールの存在が二人の平穏を脅かします。さらに、フランスは革命の動乱期に突入し、若者たちがバリケードを築いて蜂起します。その中で、コゼットと青年マリウスの恋愛も描かれ、ジャン・バルジャンは彼らの幸せを願いながら、自身の過去と向き合っていきます。
愛、贖罪、革命といったテーマを通じて、人間の尊厳と社会の正義を深く探求する物語です。
特徴
- つい一緒に歌いたくなる名曲揃いの劇中歌!
パリ市民が政府軍と衝突するシーンで、登場人物全員で大合唱する『民衆の歌 (Do You Hear the People Sing?)』や、ファンティーヌが娼婦に身を落とし、絶望の中で歌う『夢やぶれて (I Dreamed a Dream)』など、心に響く楽曲が豊富です。
- 世界中で大ヒット!舞台だけでなく映画化も。
世界各国での公演はもちろん、何度か映画化もしている本作ですが、特に知られているのが、2012年に公開されたバージョンです。 この映画は、主演のヒュー・ジャックマンや、アン・ハサウェイなど豪華キャストが結集しました。ゴールデングローブ賞、アカデミー賞を受賞するなど大ヒットを記録しています。*1
- 今なお興行収入記録を更新中!
1985年のロンドン初演(日本での初演は1987年)から、ロングラン公演となっています。世界40か国以上で上演され、観客総数は1億3,000万人を突破しています。*2
2. オペラ座の怪人 (The Phantom of the Opera)
引用:shikichannel(劇団四季の公式YouTubeチャンネル)
あらすじ
『オペラ座の怪人』は、19世紀パリのオペラ座を舞台に、奇妙な三角関係を描いた物語です。
オペラ座の地下に隠れ住むファントムは、醜い容姿から人々から忌み嫌われていますが、天才的な音楽の才能の持ち主。その才能を使って、姿を隠しながらクリスティーヌに歌の指導を行います。おかげでクリスティーヌはオペラ座の歌手として成功を収め、偶然公演を観に来ていた幼馴染のラウル伯爵と再会し恋仲に。
二人の関係を知ったファントムは嫉妬に狂い、オペラ座で不可解な事件を次々と仕掛けます。さらには事件のどさくさに紛れて、彼女を地下の湖に誘拐。助けに向かうラウル伯爵ですが、果たしてクリスティーヌをファントムから助け出せるのか・・・
執着する愛、そして、手放す愛を描いた物語です。
特徴
- 一度聴いたら忘れられない!美しい旋律
後に紹介する『キャッツ』なども手掛けた作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーによる、クラシック音楽をベースにした旋律が聴きどころです。
クリスティーヌがファントムに導かれてオペラ座の地下へ連れて行かれる場面で歌われる『オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)』や仮面舞踏会で盛大に盛り上がる楽曲『マスカレード(Masquerade)』など、耳に残るメロディが魅力的!
- 豪華絢爛!パリ・オペラ座を再現する舞台美術
ストーリーの舞台がパリ・オペラ座というだけあって、美しい舞台美術も目を引きます。印象的な巨大シャンデリア、怪人が住むオペラ座地下の湖など、目でも楽しめる舞台です。
- 実は色々なパターンがある『オペラ座の怪人』
ミュージカル、映画ともにいくつかパターンがある『オペラ座の怪人』。 原作はガストン・ルルーの怪奇小説ですが、ミュージカルでは、謎の怪人ファントムと若き歌姫クリスティーヌ、そして彼女を愛するラウル伯爵の三角関係を描いたロマンティックな物語となっています。
世界で最も知られているのがアンドリュー・ロイド=ウェバー版で、日本でも1988年の初演以来、ロングランを記録しています。
他には、怪人の人間性を掘り下げた作詞・作曲モーリー・イェストン版『ファントム』、ロイド=ウェバー版をより短縮したラスベガス版などがあります。
3. ミス・サイゴン (Miss Saigon)
引用:TohoChannel(東宝株式会社演劇部門の情報専門チャンネル)
あらすじ
舞台は、サイゴン(現在のホーチミン市)の戦争末期。サイゴンのキャバレーで働くベトナム人女性キムは、アメリカ軍の兵士クリスと出会い、一夜を共にして恋愛関係に。やがてキムはクリスの子をお腹に宿しますが、クリスは軍の解散にともないアメリカに帰国することになります。
クリスは帰国後別の女性と結婚し、新しい生活を始めてしまいますが、キムは彼の子どもタムを産み、必死に育てながら彼を待ち続けます。三年後、妻エレンとともにバンコクを訪れたクリスは、キムと対面。
キムにとっては待望の再開でしたが、状況はあまりに複雑になっていました。キムは、タムの未来のためを想い、クリスに息子を託す決断をします。そしてもう一つ、最後に壮絶な決断をする彼女ですが・・・
戦争という不可抗力の中で、キムの切なく壮絶な愛が感動の渦を巻き起こす物語です。
特徴
- 実物大のヘリコプター!圧巻の演出
大がかりな舞台装置はこの演目の見どころの一つ。実物大のヘリコプターやアメリカの高級車キャデラックなど、大スペクタクルで初演時から話題になりました。そのため、上演できる劇場が限られてしまうという制約も。
なお、ブロードウェイではヘリコプターを映像化した新演出版もあります。
- 日本人にも馴染みが深い!?ベトナム戦争版『蝶々夫人』
ミュージカルが企画された発端は、ある1枚の写真だったとのこと。写っていたのは、アメリカ兵の父親の元へ出発させられるベトナム人の娘と、その母親。この写真から、ベトナム戦争版『蝶々夫人』となったこの物語『ミス・サイゴン』が着想されました。
- 東洋を思わせる、感情に訴える名曲たち
作曲は『レ・ミゼラブル』と同じクロード=ミシェル・シェーンベルク。『命をあげよう (I’d Give My Life for You)』や『アメリカン・ドリーム』など、力強くも切ない名曲が満載です。
ミュージカル俳優のコンサートなどでも定番の曲となっています。
4. キャッツ (Cats)
引用:shikichannel(劇団四季の公式YouTubeチャンネル)
あらすじ
ノーベル文学賞を受賞した文学者T.S.エリオットの詩集『キャッツ -ポッサムおじさんの猫とつき合う方法-』を元にしたミュージカル作品。
個性豊かな猫たちが一堂に会し、天に昇ることができる"ジェリクルキャッツ"の選定を巡る一夜の物語です。劇中では、猫たちが自分の人生を、歌とダンスで表現します。
猫の目線を通した人間社会への風刺など、隠れたメッセージにハッとさせられる場面も。大人も子どもも楽しめる作品となっています。
特徴
- 歌とダンスで魅せる舞台
小説を原作とするものが多い中、『キャッツ』は詩集が原作となっています。そのため、主だったストーリーはありません。見どころは、まるで本物の猫のようなダンスと、圧倒的な歌唱の数々。中でも、オペラ座の怪人と同じ作曲家・アンドリュー・ロイド=ウェバーによる『メモリー (Memory)』は、多くのアーティストにカバーされてきた名曲です。
- トニー賞7部門受賞!映画化も
1981年のロンドン初演依頼、ブロードウェイなど世界で上演されています。日本では劇団四季が1983年に初演して以来のロングラン。2020年には映画化もされ、話題となりました。*3
映画では、演技力に定評のある英国ロイヤルバレエ団のプリンシパル(主役級)ダンサーも登場しました。
- 劇場に一歩入ったら、猫の世界!?
物語の舞台が都会の片隅のゴミ捨て場のため、劇場全体がごみやガラクタだらけ!さらに、全て猫目線の大きなサイズなので、観客も猫の世界に入り込んだ感覚を体験することが出来ます。
客席側から猫が登場するなど、他にも面白い仕掛けがたくさん。
これらを観るには?
2025年2月現在、ご紹介した世界四大ミュージカルの上演予定は以下の通りです。
レ・ミゼラブル(主催 東宝)
2024年12月〜2025年2月、帝国劇場建て替え前のクロージング公演として注目を浴びた本作。1987年の日本初演以降、帝国劇場を中心に定期的に(概ね2年に1回)上演されてきました。帝国劇場が休館となった現在、全国ツアーで他県でも観ることが可能です。
次回上演予定
2025年3月2日(日)~28日(金)@梅田芸術劇場メインホール *4
オペラ座の怪人(主催 劇団四季)
劇団四季が断続的に全国を回っており、日本各地で鑑賞できます。実は本作、ミュージカルの本場ブロードウェイでは2023年に終演してしまいました。本作に限ったことではありませんが、「いつか観たい」と思っていた作品がある日突然終わってしまうこともよくあります。機会があるうちに、ぜひ足を運んでみてください。
次回上演予定
2025年9月15日(月・祝)~2026年4月5日(日)@キャナルシティ博多 *5
キャッツ(主催 劇団四季)
本作も劇団四季がツアーを行っており、全国で観られます。各地での公演期間は3~4ヶ月ほどと比較的長く、都合を合わせやすいことも嬉しいポイント。 物語の舞台、都会のゴミ捨て場を模した装飾にひっそり“ご当地ゴミ”があるのも見どころです。
次回上演予定
2025年5月6日(火・休)~8月20日(水)@東京エレクトロンホール宮城 *6
ミス・サイゴン(主催 東宝)
東宝が数年に一度のツアー公演を行っています。次回は2026年に上演が決定しているものの、詳しい情報はまだ明らかになっていません。直前の公演は2022年と、4年ぶりの上演を待ちわびている人も多いはずです。チケット情報はこまめにチェックしておきましょう。
次回上演予定
2026年 ※日時詳細未定 @未定 *7
最新の公演情報は、各劇団や主催者の公式サイトでご確認ください。 人気公演はチケットが売り切れてしまうこともあるので、定期的にチェックしておくことをおすすめします!
あなたの気になる作品はありましたか?
今回ご紹介した4作品は、いずれもミュージカルの世界を代表する名作です。
それぞれが異なるテーマやメッセージ性を持ちながらも、素晴らしい楽曲やダンスで人々を魅了してきたことは共通しています。また、全ての作品をイギリスのミュージカルプロデューサーである、キャメロン・マッキントッシュが手がけています。
その人気ぶりから、映画化されている作品も多く、鑑賞のきっかけが多くあることもポイント。ミュージカル鑑賞の最初の一歩としてぜひ、ご紹介した作品を観劇してみてはいかがでしょうか?
ミュージカルの魅力に引き込まれること間違いなしです。
出典・参考
中島薫『魅惑のミュージカル鑑賞入門 人気の50作品を徹底ガイド』,世界文化社,2013年8月
塩田明弘『知識ゼロからのミュージカル入門』,幻冬舎,2009年9月
*1:東宝「ミュージカル『レ・ミゼラブル』」INTRODUCTION 2025年1月13日
*2:東宝「ミュージカル『レ・ミゼラブル』」INTRODUCTION 2025年1月13日 中島薫『魅惑のミュージカル鑑賞入門 人気の50作品を徹底ガイド』,世界文化社,2013年8月,98ページ
*3:塩田明弘『知識ゼロからのミュージカル入門』,幻冬舎,2009年9月,114ページ
*4:東宝「ミュージカル『レ・ミゼラブル』」全国ツアー公演 2025年2月15日
*5:劇団四季「ミュージカル『オペラ座の怪人』作品紹介 | 劇団四季【公式サイト】」トップ 2025年2月6日
*6:劇団四季「ミュージカル『キャッツ』作品紹介 | 劇団四季【公式サイト】」トップ 2025年2月6日
*7:東宝「ミュージカル『ミス・サイゴン』」TOP 2025年2月6日