「日常にモヤモヤを抱える全ての人へ」過激なのに目が離せない魅力とは(『ポルノ』出演:玉置玲央さん、前田敦子さん)

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劇作家・演出家・俳優の長塚圭史さんが主宰する劇団・阿佐ヶ谷スパイダースの問題作『ポルノ』。今回24年ぶりの再演となる本作に出演する玉置玲央さん、前田敦子さんにインタビューを実施しました!衝撃的な出来事を巻き起こす登場人物たちのことを「愛おしい」と語るお二人が、キャラクターに感じている魅力とは?さらに、本作を楽しむためのポイント、印象に残っている観劇体験までたっぷりお話を伺いました。

『ポルノ』あらすじ

坂が多い坂上町を舞台に7人の男女の屈折した恋物語が描かれます。玉置さん演じる国旗耕ニと前田さん演じる美和子は坂上町に暮らす夫婦。国旗は町会議員に立候補し、高齢者や障がいのある人のために町内の全ての坂をエスカレーターにするという公約を掲げて選挙活動に勤しんでいます。支持率が伸びず悩んだ国旗は、公約に説得力を持たせるため自分の足を折ってしまおうかと考え、美和子に相談します。一方、美和子も子どもが欲しいけれどできないという悩みを抱えていました。一見仲睦まじい夫婦の間で繰り広げられるのは、どこか危うい雰囲気漂う会話。ある時美和子の行動によって事態は思わぬ方向へ…。

「こういうことやっちゃっていいんだ!?」と衝撃を受けた作品

本作に対してどのような印象を持っていますか?

玉置さん:僕は高校生の時に、長塚圭史さん主宰の劇団・阿佐ヶ谷スパイダースが上演していた『ポルノ』の初演(2002年)を観に行ったんです。それまで観たことがなかったタイプの舞台で「舞台ってこういうことをやっちゃっていいんだ!?」と衝撃を受けました。価値観をひっくり返されるというか、自分の中になかった新しい価値観を叩き込まれるような体験を、多感な高校1年生のときにしてしまいまして。今でも自分の原体験として、舞台に立つ上での指標になっている作品です。

口に出すのも憚られるような表現が使われる作品ではあるんですが、だからこそ新しい価値観を開いてくれると思います。歪んだ世界観で、歪んだ登場人物が多く出てくるんですが、彼らにとっての「正義」があって、正しいと思うことにまっすぐに取り組んでいるんです。その歪(いびつ)さが面白いところだと思っています。

前田さん:初めて台本を読んだときは、とにかく『ポルノ』というタイトルのインパクトだったり、今の時代なかなか見せられないようなことが起きる驚きが強かったです。でもキャラクターたちの内面が見えてきた時に、もっと深い話だなと分かってきて。癖のある登場人物がたくさん出てくるんですが、みんな必死に生きていて愛おしいです。まっすぐすぎて笑ってしまうし、母性がくすぐられるような感じがします。

もしかしたら観客の皆さんにとっても、最初はひたすら衝撃的な体験として記憶に残るかもしれないけれど、後々思い返してみると気づきがたくさんあると思うんです。どれだけ気づけるかというところで、今の自分の“人間力”が測られているような気分になる作品ですね。

普通じゃなくてもブレる必要はない

お二人それぞれの役柄に対する印象はいかがでしょうか?

前田さん:私が演じる美和子だけではなくて、この物語の登場人物全員に言えることなんですが、それぞれに「私は間違っていない」という自信とブレない軸を持っているところが気持ちいいなと思っています。もしかしたら自分が普通だと思っていることって、他の人からすると普通じゃないのかもしれない。だからと言ってブレる必要はないんだと思いながら演じています。美和子としてブレないようにちゃんと立っていることで、観ている人をモヤッとさせず、スカッとした気分になってもらえる舞台にしたいと思っています。

玉置さん:僕の演じる国旗耕ニという役柄は、自分の中で全くもって未知の領域というわけでもないとは思っているんですが、かなり突拍子もないキャラクターではあります。そんな僕の隣に前田さんがブレずにいてくれているおかげで、寄り添いやすくてすごく助かっています。稽古していく中で、自分自身もいろいろ試してみますし、僕の出方次第で前田さんのお芝居も変化していくと思います。今の二人でできるものをかき集めて、夫婦のキャラクターを作っていくことになるんだろうなと思っています。

24年振りの上演となる本作ですが、今の時代に上演される意味をどのように感じていますか?

玉置さん:内容としては、この令和の時代にそぐわないかもしれません。率直に言うとコンプライアンスに引っかかるかなと。じゃあ何故わざわざやるのかということを、僕たち自身が考えながら作っていかなければと思っています。登場人物たちの歪んだ言動は、フィクションだから許されるなどとは考えていませんが、そこにそれぞれの正義や正しさ、愛情があるんです。それを俳優として突き詰めて表現することで、この作品を今の時代に上演する意味が、お客様にも伝わると信じています。

前田さん:玉置さんがお話しされたように、コンプライアンスの問題などもあり、できないことが増えている時代だとは思いますが、若い人たちが観て「こんなこともしていいんだ」と創作意欲を掻き立てられたら素敵だなと思います。そう思ってもらえたら今この作品にチャレンジする意味はすごくあるんじゃないかと。観て、知って、色々なことを考えてくれたら嬉しいですね。

自分の感情に素直に観てほしい

観劇初心者の方向けに、作品の楽しみ方を教えていただけますか?

玉置さん:チラシのビジュアルやタイトルからネガティブな方向に先入観を持たれる方もいるかもしれませんが、頭も心も空っぽにして、たくさん睡眠をとって元気な身体で受け取ってもらえたら、存分に楽しめる作品になると思います。物語はシンプルですし、事前に準備などは必要ないので、ありのままの自分で来てみてください

前田さん:あまり見たことがない世界に出会えると思うので、驚くところもあるとは思うんですが、自分の感情に素直に観てほしいと思います。ちょっと不謹慎に思えるような言葉を浴びた時に、おかしいと思ったら笑ってほしいんです。劇場は何にも縛られない自由な場所であってほしいと思っているので、お客様にも自分の気持ちを偽らないで観てほしいですね。登場人物たちも自分に正直な人しか出てこないですからね(笑)

お二人の初観劇の思い出や印象に残っている観劇体験を聴かせてください。

玉置さん:初観劇とは違うのですが、初めて自分の意思で選んで観に行った舞台のことをすごく覚えているんですよ。小学校4年生か5年生の時に、当時好きだった女の子のバレエの発表会を観たんです。自分で「観たい!」と思って観たので強烈な思い出として今も心に残っています。そんな前のめりな気持ちを、今回の作品を観る方にも経験してもらえたら嬉しいですね。

前田さん:私は今年の1月に宝塚観劇デビューしてとても感動したんです。「まさにエンタメだ!」と思いました。 宝塚大好きな蒼井優さんと高橋真麻さんが連れて行ってくれたんですが、2人とも目をキラキラ光らせていて。誘ってもらって行ってみたら「ハマっちゃうのも納得」と思いました。きっかけは自発的ではなくても、行ったらクセになってしまう。まだまだ観たことない世界があるんだ!という発見がありました。ちゃんと観客の目を見て狙い打ちでファンサービスしてくれるのがすごいです。私絶対狙い打ちされたんですよ!

今回の舞台中にお二人からのファンサは…?

前田さん:演劇では難しそうですよね(笑)

玉置さん:まずお客様のことちゃんと見るっていうのが恥ずかしくてできないよね。でも僕は街頭演説をするシーンではお客様に向かって演説する形になると思うから、何かやってみようかな。ウインクとか(笑)

前田さん:そんな回があってもいいかもしれないですね!

玉置さん:頑張ります(笑)

期待しています!最後にお客様へメッセージをお願いします。

玉置さん: 皆さん色々なしがらみの中で生きていると思いますが、他人の目を気にせず自分に正直に生きてみてもいいのかもしれないと感じてもらえたら嬉しいです。皆さんの肩の荷がちょっとでも下りるといいなと思っています。

前田さん:毎日一生懸命生きている皆さんが自分に自信を持てるように、背中を押す作品にしたいと思います。私って普通じゃないのかもと思って気にしている方も、もっとヤバい人たちが楽しそうに生きていますので、気負わず観に来てください!

プロフィール

■前田敦子さん
ヘアメイク/髙橋里帆(HappyStar)
スタイリング/南まりい

衣装クレジット
tops Cygne
pants Sov
accessory BELLESIORA
shoes 銀座かねまつ

玉置 玲央(たまおき れお)

1985年生まれ。東京都出身。劇団「柿喰う客」所属。近年の主な出演作は、舞台『殺文句』『「Take Me Out」2025』『狩場の悲劇』、映画『夢の中』『風よ あらしよ 劇場版』、NHK大河ドラマ『光る君へ』、ドラマ『キャスター』『しあわせな結婚』など。今年5月には自身が執筆した戯曲『どくはく』の演出を手がける、また6月には劇団「柿喰う客」20周年記念公演『サバンナの掟』、2026年新作本公演『真ッ逆様』への出演が控える。

前田 敦子(まえだ あつこ)

1991年生まれ。千葉県出身。2005年にアイドルグループAKB48の1期生としてデビュー。2012年のグループ卒業後は俳優業を中心に活動し、映画やドラマ、舞台など幅広い分野で活躍している。2026年には14年振りとなる写真集『Beste』を発売。近年の主な出演作に、映画『不死身ラヴァーズ』『一月の声に歓びを刻め』『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』『恋に至る病』、ドラマ『人事の人見』『愛はスパイス』、ミュージカル『夜のおんなたち』舞台『月刊「根本宗子」』『飛び立つ前に』など。

公演情報

公演名 ポルノ
日程・会場
▶︎お問い合わせ
【東京公演】
2026年4月2日(木)~12日(日)
下北沢・本多劇場
▶︎ゴーチ・ブラザーズ
03-6809-7125 (平日12:00〜17:00)

【福岡公演】
2026年4月15日(水)・16日(木)
西鉄ホール
▶︎ピクニックチケットセンター
050-3539-8380 (平日12:00〜15:00)

【大阪公演】
2026年4月25日(土)・26日(日)
サンケイホールブリーゼ
▶︎キョードーインフォメーション
0570-200-888 (12:00~17:00 土日祝休業)
Webサイト https://www.prn-stage.jp/

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