「夢とエネルギーが溢れるOSKの舞台へようこそ」(『レビュー 夏のおどり』OSK日本歌劇団 男役トップスター:翼和希さん/娘役トップスター:千咲えみさん)

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2025年8月、新橋演舞場にて上演される『レビュー 夏のおどり』。 今回は、大阪を拠点に100年以上の歴史を誇るOSK日本歌劇団より、トップスターの翼和希さんと娘役トップスターの千咲えみさんにお話を伺いました。お二人の言葉から伝わってきたのは、OSKならではの芸術とスポーツが融合したような、圧倒的なエネルギーに満ちた「夢の世界」。舞台鑑賞初心者にもおすすめの、唯一無二のその魅力をぜひ感じてください。

華やかさの中にたくましさがある

まずは、歌劇団とはどのようなものか教えてください。

翼さん:歌劇団とは女性だけで構成された劇団で、男役と娘役に分かれています。男性が女性と男性を演じる歌舞伎とは逆のような感じですね。 男役は「女性の理想の男性像」を演じ、娘役は「女性が憧れるような女性像」を極める。現実には存在しない人物像を目指しているので、まさに夢のような世界観だと思います。

その中でもOSK日本歌劇団にはどのような特徴がありますか?

翼さん:私たちは103年前(1922年、大正11年)に、松竹楽劇部として大阪に生まれた劇団です。100年以上の歴史をもつ歌劇団は、宝塚歌劇団とうちの2つだけです。 NHK朝ドラの『ブギウギ』をご覧になった方は分かると思うのですが、私たちOSKは労働争議の中や、戦前・戦中・戦後という激動の時代もずっと生き続けてきました。また、2003年の劇団解散という危機にもぶつかったり…でも、それを一つずつ乗り越えて、歴史が今に繋がっています。だからこそ、華やかさの中にたくましさがあるのが、OSKならではの魅力の一つなんじゃないかなって。OSKならではといえば、娘役も男前なのが特徴かもしれません。

千咲さん:そうですね。OSKでは、娘役もメインの場面があるので、決して男役を引き立てるだけではなく、かっこいい女性像もご覧いただけると思います。

翼さん:娘役が「かすみ草」のようにそっと寄り添うのではなく、男役と娘役が対等な立場で、まるで「ひまわりとハイビスカス」のように切磋琢磨しているのは素敵だなと思います。

「レビュー」とはどのような公演でしょうか?

翼さん:歌劇団がよく行う「レビューショー」は、歌と踊りで構成された舞台のことです。発祥はヨーロッパですが、日本人ならではの統率のとれた群舞というのが一つの見どころですね。

千咲さん:歌舞伎や日本舞踊以外に、日本の文化・芸術を観られるところが、今は少なくなってきていますよね。

翼さん:それに、日本舞踊のレビューショーを定期的に上演しているところはOSK以外にほとんどないですし、本格的な日本舞踊を観るのはちょっとハードルがあるなという方はぜひ一度観に来てみてほしいです。

千咲さん:やっぱり日本人には和の心が根付いていますしね。

スポーツ観戦をしているような感覚で

OSK日本歌劇団のレビューは、どのような舞台でしょうか?

千咲さん:私が初めてOSKのレビューを観たときは、生きる力・エネルギーが、すごくみなぎっている感覚がありました。入れ替わり立ち替わり、着替えてすぐ出てきて、もう身体が壊れるんじゃないかっていうぐらい激しく踊って、また次の衣裳で出てきて…。 ものすごいスピーディーなんですけど、観終わった後に、スポーツした後の爽快感みたいなものを、お客様にもきっと味わっていただけると思います。

翼さん:確かに、それもOSKならではかもしれない! 私がOSKのレビューを初めて観た時の感覚は、芸術鑑賞・舞台鑑賞をしているというより、スポーツ観戦をしているような感覚でした。「1ミリも動いていないのにちょっと汗ばんだな」「踊ってないけどなんだか踊った気がするな」みたいな気持ちになって、心地良い疲労感に包まれながら、私たちの劇団のテーマソング「桜咲く国」を口ずさみながら帰る、みたいな(笑)

千咲さん:そうそう、OSKって男性のお客さんも多いんです。

翼さん:観ていて気持ちがいい、清々しいと言っていただくことが多いので、やっぱりスポーツ観戦にも通じるところがあるのではないかなと。

千咲さん:男性にとっても歌劇の第一歩を踏み出しやすいかもしれませんね。

歌劇と聞くと文化系なイメージがありましたが、意外と体育会系なんですね!

翼さん:そうなんです(笑)自分たちでいうのも…ですけど、もはやアスリートのような。精神的にも体育会系な子が多い気がします。「できるようになるまでやる」という感じで。私はバレーボールをやっていたのですが、おかげで根性があって良かったなと思っています。

千咲さん:夕日に向かって走っているような青春を感じます(笑)

「チョンパ」「ラインダンス」は必見!

まずはここを観てほしい!というシーンはどこですか?

翼さん:日本舞踊の「チョンパ」は外せません。チョンパというのは、完全に暗転の状態で、拍子木が「チョン」と鳴って一気に明転して、その世界に一気に引き込まれるという演出です。今回のチョンパの演出で明転した時には、私は舞台上にはいないのですが、花道の隙間から皆のチョンパを見ていて、明転した瞬間にお客様から「わぁ!」っと歓声が上がるのが大好きで(笑)

あと、やっぱり一番拍手が大きいのは、皆で横一列になって手を組んで足上げをする「ラインダンス」ですね。このラインダンスは劇団員の登竜門になっていて、皆若手のうちに揃えることの大事さや団結力を学びます。クライマックスになることが多いのですが、足を上げるという何も隠せるものがないシンプルな動きだからこそ、一番技が光るのでお客様の感動も生まれるのかなと。

千咲さん:私が観客として初めてラインダンスを観た時は、ずっと足を上げていて絶対に辛いはずなのに、笑顔で続けている姿に涙が出てきました。「頑張れー!」って。 でも、やる側になって分かったのは、やっぱりお客様の力が凄くて。稽古場ではヘタりそうになる場面でも、声援のおかげで本番ではいつも以上の力が発揮できるんです。

「花鳥風月」のファンタジー、これぞOSKのパレード

全二部構成の本公演についてご紹介いただけますか?

翼さん:第一部は、「花鳥風月」4つの世界とフィナーレで構成されています。基本的には分かりやすく歌と踊りで表現するのですが、「鳥」と「月」の場面は歌がなく、踊りだけでストーリーを表現しなくてはいけないんですよ。その分ちょっとハードルが上がると感じるかもしれませんが、事前に語り部が結末まで喋ってから始まります。イヤホンガイドのような感じになっているのですごく観やすくなって、物語以外の舞踊の所作にもフォーカスできるんじゃないかなと思います。

例えば、「鳥」の場面はリトルマーメイドみたいな物語です。姫に恋した鳥が、人間になりたいという願いを叶えてもらったけど、禁忌を破って実は正体は鳥であるということを姫に伝えてしまい…というお話です。

千咲さん:歌はないけれど、ディズニーに通じるファンタジーな部分もあるし、ワーって煙が出てきたり…色んな舞台効果があって飽きないと思います。海外のお客様でもあの場面の意味が分かったとお聞きしたことがあって、言葉を超えて通じるものがあるんだなと思いました。

翼さん:せり*1も上がるし、盆*2も回る。さらには、舞台上で早着替えがあったり。着物をどんどん脱いでいって、人間になったり、鳥になったり、だいぶ変化が激しいので、結構皆さん集中して観てくれるんじゃないかなと思います。 あとは、音楽も物語性のある楽曲なので、没入感のある場面になっているんじゃないかなって。音楽は洋のリズムで、激しくて華やかだよね。

千咲さん:第二部は、ストーリー性はないのですが、本当に色んな場面があって、色んな衣裳をきて、色んな男性女性が出てくるので、皆さんのお好みのシーンを見つけていただけたらなと。「これがOSKです!」って感じのパレードみたいな演目です。深く考えずに、目で見たものを楽しんでいただけるのかなと思います。

翼さん:あ、普段歌舞伎とか日本舞踊のイメージが強い劇場(新橋演舞場)で洋物をやるというのも新鮮なんじゃないですかね。席に座って振り向いたら、ちょうちんが!花道が!すっぽん*3が!「ここで演じられるのは歌舞伎だけじゃないんだ」って、私も衝撃的でした。演目と劇場のいい意味でのギャップ、面白い違和感があると思います。

最後に一言お願いします!

千咲さん:今はSNSや映像が発展していて、舞台離れが始まっている時代かもしれません。だからこそ、客席で生の人間が演じている姿を観るという体験は、全く新しい感覚になるはずです。人生で一度でも味わっていただきたいなと思います。この舞台も、一つとして同じ回はなくて、毎回その瞬間に新しく生まれる何かがあります。同じ時代に生まれたからこそ、ぜひ観にきていただきたいです。観終わった後に「明日も頑張ろう!」と思えるようなステージを皆様にお届けしたいと思います!

翼さん:その日、その時間、その席に座っているのは1人しかいないから、自分だけの時間を是非堪能してほしいです。常日頃から持っているスマホや、色んな情報が勝手に入ってきちゃうものを1回全部手放して、「今その場で起きているものだけに集中できる」って、すごく贅沢な時間だと思うんです。その時は誰もあなたの邪魔をしないし、あなただけの時間だから、OSKがお届けする色んな世界に浸っていただけたらなと思います。劇団員一丸となって頑張ってまいりますので、どうぞ皆様劇場に足をお運びください!

プロフィール

翼和希(つばさ かずき)

エネルギッシュな歌とダンス力を兼ね備え、透明感ある演劇力で舞台を創り上げる三拍子揃ったトップスター。入団 10年目の2022年には、40年以上続く福井県越前市「たけふレビュー」公演で1ヶ月のロングラン公演を初主演。2023年はOSK日本歌劇団出身の笠置シヅ子をモデルにした連続テレビ小説「ブギウギ」でヒロインの先輩・橘アオイ役に抜擢される。8月には松本清張賞受賞作「へぼ侍」の初舞台化を成功させた。2024年2~3月には、笠置シヅ子生誕地の東かがわ市をはじめ全国4カ所で「翼和希コンサート」を開催。6月には12年ぶりの金沢公演で主演。9月にトップスターに就任し、記念公演「レゼル Les Ailes」を岩国市(10月)、名古屋市(2025年3月)、東かがわ市(同)で上演したほか、5年ぶりのシンガポール公演(1月)も情熱的な舞合を繰り広げた。京都・南座(4月)で同記念公演の掉尾を飾る。また、2024年11月には大阪府市の共催を得て、日舞と洋舞のグランドレビュー「レビューRoad to 2025!!」を上演し、万博の機運醸成に尽力した。2025年2月には大阪と東京でミュージカル「三銃士」で主演。トップスターお披露目公演として6月大阪松竹座、そしていよいよ8月に新橋演舞場でグランドレビューを上演する。大阪文化の振興に貢献したことが認められ「2024年度 咲くやこの花賞」を受賞。出身地である大阪府枚方市のPR大使を務める。

千咲えみ(ちさき えみ)

初々しい娘役から大人の女性まで、様々な役を演じ分ける娘役トップスター。近年は、2019年「新撰組」「Salieri&Mozart~愛と憎しみの輪舞」とミュージカル作品に続けてヒロイン役で出演。2021年に娘役トップスターに就任し、同年秋には娘役のみで上演した「La Cerise」で主演をつとめた。2022年の100周年は記念公演のほか10月「たけふレビュー」、11月「大阪府枚方市公演『Diamond Quality』」に出演。2023年は大劇場公演や、12月の先斗町歌舞練場「ZIPANGU 光が彩る演舞祭」で華を添えた。2024年は楊琳と舞美りらの退団公演のほか、6月には北國新聞赤羽ホール「翼和希レビューショーin 金沢」に出演。そして山口公演(10月)、大阪公演「レビューRoad to 2025!!」(11月)、シンガポール公演(2025年1月)、ミュージカル「三銃士」(2月)、名古屋公演(3月)、香川公演(同)と翼和希トップスター就任記念公演のすべてに出演。4月は就任記念の掉尾を飾る京都・南座公演、そしてトップスターお披露目公演となる6月の大阪松竹座、そして8月の新橋演舞場に出演する。愛らしい歌声と力感あふれるダンスが一層輝きを増している。

公演情報

公演名 レビュー 夏のおどり
日程 2025年8月22日(金)~8月26日(火)
会場 新橋演舞場
Webサイト 夏のおどり
公演に関するお問い合わせ 新橋演舞場
03-3541-2600

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subscription.recri.jp

*1:せり:舞台上の一部を四角く切り抜いて上下させ、建物や人物を登場させたり引っ込めたりする昇降装置

*2:盆:舞台中央の床を大きく円形に切って回転させる装置

*3:すっぽん:花道にある小さなせり