「クラシックにコンテンポラリー、いいとこ取りの詰め合わせ」(『Young NBJ GALA 2025』バレエダンサー・中島瑞生さん)

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2025年7月に開催予定の、新国立劇場バレエ団『Young NBJ GALA 2025』に出演する中島瑞生さんに、バレエの魅力やおすすめの見方、そして本公演の見どころについてお話をうかがいました!

煌びやかな美しさの中に、自由なアドリブも

中島さんの思うバレエの魅力を教えてください。

バレエの一番の魅力は、身体のラインの美しさの造形美とか、衣裳・舞台装置も含め、“煌びやかな美しさ”だと思っています。それから、新国立劇場バレエ団はほとんどの場合、生のオーケストラの演奏で踊るので、音楽と踊りを同時に味わえるというのも、すごく魅力的だと思います。

物語のあるバレエ作品では大勢が舞台上の色々なところで分かれて踊っているようなシーンがたまにあるんですが、そういう時は全体を俯瞰して観てみてください。踊りと踊りの合間とかところどころは実は自由で、ちょっと面白いことをしている人がいるかもしれません(笑)。

伝統的なイメージの強いバレエにも、そんな柔軟な場面があるんですね!

意外とあるんですよ!

ソロが真ん中で踊っているようなパートでは、周りは停止してソロを引き立たせる必要がありますけど、全体的にわいわい皆が踊っているシーンで、ちょっと脇のほうを見てみると、面白い動きをしてる人がいるぞ!と気づくみたいな(笑)。

もちろん振り付けで決まっているマイム(身振り手振り)もあるんですけど、アドリブのマイムもあったりして。

公演ごとに、同じ人でも違った動きをしていたり、配役が違えばまた全然違った動きになったりもします。特にキャラクターが確立されている作品では、よくあることなので探してみてください!

いいとこ取りで楽しめるガラ公演

今回の『Young NBJ GALA 2025』は、様々な演目がラインナップされていますが、そもそもガラ公演とは、どういった公演なのでしょうか?

基本的にバレエは、『白鳥の湖』とか『くるみ割り人形』とか、1つのストーリーでまるっと構成されているものが多いですが、ガラの場合は色々な作品のクライマックスのシーンがピックアップされています。大体、主役の男女2人の踊りが選ばれることが多いです。

最初に男女2人がゆったりした曲で踊って、その後にそれぞれのソロの踊りがあります。最後にまた2人で組んで、圧倒的なテクニックを魅せるような大きな踊りで締める。これがセットでパ・ド・ドゥと言われています。ダンサーの技術が際立つ、メインディッシュの詰め合わせのような感じなので、バレエ初心者の方にもおすすめです。

あとは、ひとつの作品ではなく、しっとりしたものもあれば華やかなものもあり、いいとこ取りで様々なバレエを楽しめる点もおすすめです。

さらに今回は、前半がパ・ド・ドゥを披露するクラシックバレエ、後半がコンテンポラリーになっていて、ガラッと雰囲気も変わります。

女性の歌声に乗せて表現する“孤独”

中島さんが今回出演される『O Solitude』のご紹介をお願いします。

前半のクラシックバレエに対して、この作品はコンテンポラリー、いわゆる現代舞踊です。 『O Solitude』という題名を和訳すると「おお、孤独よ」という意味になります。

ソロで6分半〜7分ぐらいの舞台で、照明もクラシックバレエとは全く違ってすごく暗くて。孤独が際立つ演出です。そして、バレエでは珍しく女性の歌が入った音楽に乗せて踊るんです。

ちなみに、この演目はもう一人の女性(大木満里奈/新国立劇場バレエ団)と日替わりで出演するのですが、女性の歌声に乗せて女性が踊るのと、男性が踊るのとでは、振り付けが一緒でも違った印象になると思います

女性が踊る場合、踊っている本人が孤独を歌っているように見えるんですよ。ただ、僕の場合は、歌が女性の声・ダンスが男性になるので、孤独を歌っている人をどこか俯瞰して、別の人間がダンスで表現しているような。ミュージックとダンスが分離して、同時並行しているような…。踊る人の性別によっても個性が出る作品ですね。

踊りを通して何を訴えたいのかを感じてほしい

コンテンポラリーを初めて観る方には、この作品のどこに注目してほしいですか?

初心者の方には、結構難しいと思われがちですよね(笑)。 クラシックバレエは、目に見えるものをそのまま楽しんでもらえますが、コンテンポラリーは振り付けや演出をする側の意図というか、踊りを通して何を訴えたいのかを感じてもらいたくて

舞台に上がると客席は真っ暗で、こちらからはほとんど何も見えない。ただたくさんの人からの目線だけを感じるんです。

でも、例えば渋谷のスクランブル交差点の中にいても、ふと孤独を感じる時ってあると思うんですよ。人が周りにいてもほとんどが自分の知らない人で、これからもほとんど関わりを持たないであろう人たちで。つまり、どんなに周りに人がいても「繋がり」がなければ孤独になる「人と人との密な繋がり」がいかに大事かということですよね。

何千人もに観られている舞台に立ったときに、そこで感じた僕なりの孤独を踊りにして魅せることができたら、それはすごく素晴らしいことなのかなと思います。

公演を観に来られる方へ、最後にメッセージをお願いします!

この公演では、クラシックバレエの醍醐味であるパ・ド・ドゥも3つ観られますし、かつコンテンポラリーも2つ揃っていて、すごく幅広く有意義な舞台になっていると思います。

そしてこの舞台は、若手のダンサーが多く起用されています。それぞれの作品に出るエネルギー溢れる若手のダンサーが、切磋琢磨して稽古に励んできた姿を感じてほしいです。フレッシュさも見応えがあるところだと思います!

プロフィール

中島瑞生(なかじま みずき)

バレエダンサー・モデル。新国立劇場バレエ団ファースト·アーティスト。小学4年生でバレエと出合い、11歳から真島恵理バレエスタジオで本格的に学ぶ。2012年に新国立劇場バレエ研修所に入所し、予科・本科を経て2016年にバレエ団に入団。以降、『白鳥の湖』『不思議の国のアリス』『ドン・キホーテ』など数々の作品で主要な役を務め、注目を集める。2024年には世界初演の『人魚姫』で王子役に抜擢。コンテンポラリーから古典作品まで幅広く出演し、2025年7月には『Young NBJ GALA 2025』にて『O Solitude』を踊る。

公演情報

公演名 新国立劇場バレエ団 「Young NBJ GALA 2025」
パ・ド・ドゥ集 / O Solitude /The Theory of Reality
<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>
日程 2025年7月12日(土)~7月13日(日)
会場 新国立劇場 中劇場
Webサイト Young NBJ GALA 2025 | 新国立劇場 ダンス
公演に関するお問い合わせ 新国立劇場ボックスオフィス
03-5352-9999
(10:00~18:00/休館日を除き年中無休)