「人間も自然の一部である」神戸で生まれ世界を巡ったコンテンポラリー作品が原点回帰(『STILL LIFE -スティル・ライフ-』出演:森山未來さん)

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コンテンポラリーダンス公演、『STILL LIFE -スティル・ライフ-』が世界を巡りついに日本で初上演されます。本作は、ダンサーの森山未來さんと、アルゼンチン出身のダンサー、ダニエル・プロイエット(Daniel Proietto)、そしてノルウェーの演出家・振付家アラン=ルシアン・オイエン(Alan Lucien Øyen)の共同制作で生まれた作品です。その原点には、10年以上前にさかのぼる彼らの出会いがありました。今回は、ダンサー・俳優の森山未來さんにインタビュー!本作の制作プロセスを通して、「STILL LIFE≒死んだ自然」という意味を含んだタイトルに込めた想いや、森山さんが伝えたい人類共通のテーマについて伺いました。

「いつか一緒に作品を作れたら」が実現

本作は、振付家のアラン氏と、ダンサーのダニエル氏との共同制作となりますが、まずはお三方の出会いと制作の背景を教えていただけますか?

二人とは、実は2011年頃からの知り合いでした。2012年に『テヅカ TeZukA』*1というダンスパフォーマンス公演があったのですが、ダニエルとはその作品で初めて共演しました。そして、公演を観に来ていたアランとも知り合い、3人で食事に行ったのが最初で、その時から「いつか一緒に作品を作れたらいいよね」という話をしていたんです。

その後数年でさらに実力をつけ、世界でも名が知られるようになった彼らと、2020年頃に改めて「そろそろ3人で何かやろうよ!」という話になりました。そこから少しずつ構想を進めていき、具体的に企画を立ち上げ、2024年5月のノルウェー・オスロ初演を目指すことになったという流れがあります。

アラン=ルシアン・オイエン氏 プロフィール

ノルウェーを代表する振付家・劇作家・演出家。ダンスと演劇を融合させた舞台作品で、国際的に高く評価されている。ノルウェー国立コンテンポラリーダンスカンパニー「Carte Blanche」や、アマンダ・ミラー率いる「Pretty Ugly Dance Company」でダンサーとして活動後、2006年に自身のカンパニー「winter guests」を設立。ノルウェー国立バレエ団のハウス・コレオグラファーを務めるほか、ピナ・バウシュ没後のヴッパタール舞踊団やパリ・オペラ座バレエなど世界有数のカンパニーに作品を提供している。ヘッダ賞、ウィルヘルムセン・オペラ&バレエ賞など受賞。近年は神戸での滞在制作を通じて本作『STILL LIFE -スティル・ライフ-』を創作するなど、日本との協働にも取り組んでいる。

ダニエル・プロイエット氏 プロフィール

アルゼンチン生まれ。ブエノスアイレスのテアトロ・コロン附属学校でクラシックバレエを学び、16歳でプロとして活動を開始。チリ国立バレエ団、テアトロ・アルヘンティーノ・バレエ、サン・マルティン劇場現代バレエ団を経て、2003年から2006年までノルウェー国立コンテンポラリーダンスカンパニー「Carte Blanche」の主要ダンサーを務めた。2013年にはノルウェー国立バレエ団が彼のために「ゲスト・アーティスト」のポストを新設。英国批評家協会賞最優秀男性ダンサー賞受賞。2011年より日本舞踊・歌舞伎を宗家藤間流にて学ぶ。アラン=ルシアン・オイエン率いる「winter guests」の創設当初からの協働者として、多くの作品に出演・共同制作し、近年では『Antigone』(2025年)でも中心的役割を担っている。

10年来の関係から生まれた作品なのですね。どのように創り上げられ、今回の上演に至ったのでしょうか?

今回の作品づくりでは、まずはリサーチをし、それをもとに話し合いを重ねながらクリエイション*2を行ってから、振付に落とし込むというプロセスをたどりました。

アランの故郷であるノルウェーで初演をすることは決まっていたのですが、ずっとノルウェーでクリエイションするのではなく、「色々な土地を転々としながら作品を育てていけたらいいよね」と話していて。まずはダニエルの故郷、アルゼンチンのブエノスアイレスから始まり、神戸のAiRK*3でも滞在し、さらにはパリとノルウェーでのクリエイションを経て、初演を迎えました。

ノルウェーでの初演後は、ヴェネチア・ビエンナーレ*4に招聘され、その後、アムステルダム、スウェーデンでも上演を重ねてきました。そして今回、せっかく神戸でクリエイションした企画でもあるので、神戸文化ホールさんに僕から相談し、公演を実現する運びとなりました

「死んだ自然」を意味するタイトル

作品を創り上げていくクリエイションの過程では、どのようなテーマが浮かび上がってきたのでしょうか?

ダニエルと僕の間で「舞踏*5」が共通の話題になり、クリエイションには舞踏の創始者である土方巽さんの影響を受けました。

土方さんが残した言葉で、「舞踏とは、命がけで(必死に)突っ立った死体である」というものがあって。これは作品づくりを進めていく上で重要なワードとして、3人で共有しました。タイトルの「STILL LIFE」という言葉は、「静物画」を意味する言葉であると同時に、フランス語では「死んだ自然」といったニュアンスを持ち、土方さんの言葉とも共鳴しています。

また、アランがクリエイションに入る段階で、企画書を作ったのですが、その冒頭にアンディ・ゴールズワージー(Andy Goldsworthy)という、ランドアート作家*6の言葉が引用されていました。

私たちは往々にして、自分たちが自然の一部であることを忘れてしまう。自然は私たちと切り離された存在ではない。だから、自然とのつながりを失ったと言うとき、それは自分自身とのつながりを失ったということなのだ。

人間は自然と人間の世界を切り離して考えがちだけれど、実際には人間も自然の一部である。だから、もし人間が自然から切り離されたと感じるなら、それは自分自身から切り離されている瞬間でもある。これがこの作品の主題のひとつだと思っています。

僕もダニエルもダンスしながら結構喋ります

この作品の特徴も教えていただけますか?

ダンス作品ではあるのですが、僕もダニエルもパフォーマンス中にけっこう喋ります。字幕も出す予定です。この作品は、言語をかなり重要視したパフォーマンスでもあるので、音の言語と、字幕として視覚で入ってくる言語、その二重性がうまく作品の中で機能するとさらに面白くなるんじゃないかとアランと話しています。

アランはテキスト(台詞)を多用する振付家なんです。ダンスは喋らないものだとか、喋ったらそれはダンスではないという考え方は、コンテンポラリーダンスの歴史の中でかなり解体されてきたのですが、それでもなおアランは、演劇やダンスといったカテゴリーの境界のないパフォーマンスを追求しているところがあると思います。

合唱団も登場しますよね。

そうなんです。これはクリエイションの中で、アランが「この作品には合唱が合うんじゃないか」というイメージを持ったことがきっかけです。コーラスの持つ旋律や美しさを、作品を後押しするものとして使えたらいいんじゃないか、と。

歌声のハーモニーだけではなくて、雨音のような環境音だったり、悪魔的な阿鼻叫喚、おどろおどろしい音をみんなで一斉に作ってみたり。皆さんが想像するいわゆる「合唱団のコーラス」ではない場面が、かなりあると思います。神戸では、リサーチの時にも参画いただいた混声合唱団はもーるKOBEさんと一緒にやらせていただきます。静岡は静岡で、横浜は横浜で、地元の合唱団の方にお手伝いいただく予定ですが、普通の合唱ではないようなことをやるのは、たぶん皆さん初めてでしょうね(笑)

美術館で作品を見るような見方で

「ダンス公演」「合唱団の音楽公演」というような既存の型に当てはまらない作品なのですね。

ダンス作品と呼んでもらってもいいし、演劇作品と呼んでもらってもいいし、音楽的な公演だと言ってもらってもいい。観た人がどう感じるかを、僕らは否定するつもりはありません。各パートについて「なぜこういう流れにしたのか」「AとBがあった時、なぜB→AではなくA→Bなのか」といったことは、ロジカルに説明しようと思えばできます。でも、それは僕らが考えただけのことであって、観客の皆さんがどう感じるかは自由です

僕とダニエルのデュエット作品ですが、二人の関係は友達なのか恋人なのか家族なのか…誰かと誰かのコミュニケーションに見えるかもしれませんし、あるいはひとつの人格の中にある分裂や乖離に見えるかもしれません。

ぜひ、美術館で作品を見るような、自由な見方をしていただければと思います。

では、最後に本作を観に来られるお客様へメッセージをお願いします。

全人類に観てほしい作品ですね。シンプルにダンス作品を観たいという方や、詩的な言葉の表現に出会いたい、美しい歌声の旋律を聞きたいという方にもおすすめです。世界的なクリエイターたちの表現と、舞台に立つ森山未來を見たい!という方は、ぜひ観に来てください(笑)

プロフィール

森山 未來(もりやま みらい)

1984年、兵庫県生まれ。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。俳優として、これまでに日本の映画賞を多数受賞。ダンサーとして、第10回日本ダンスフォーラム賞受賞。東京2020オリンピック開会式ではオープニングソロパフォーマンスを担当。2022年4月より神戸市にArtist in Residence KOBE(AiRK)を設立し、運営に携わる。ポスト舞踏派。

公演情報

公演名 STILL LIFE -スティル・ライフ-
日程・会場
▶︎お問い合わせ
【横浜公演】
2026年6月13日(土)~6月14日(日)
横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
▶︎横浜赤レンガ倉庫1号館[公益財団法人横浜市芸術文化振興財団]
045-211-1515(10:00~18:00)

【神戸公演】
2026年6月20日(土)~6月21日(日)
神戸文化ホール 中ホール
▶︎神戸文化ホールプレイガイド
078-351-3349(10:00~17:00 月曜定休※祝日の場合翌平日)

【静岡公演】
2026年6月26日(金)
静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 中ホール・大地
▶︎グランシップチケットセンター
054-289-9000(10:00~18:00/休館日を除く)
Webサイト https://akarenga.yafjp.org/event/still-life_2026/(横浜公演)
https://www.kobe-bunka.jp/hall/schedule/event/dance/17134/(神戸公演)
https://www.granship.or.jp/visitors/event/detail.php?id=3600(静岡公演)

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subscription.recri.jp

*1:ベルギーのシディ・ラルビ・シェルカウイ(Sidi Larbi Cherkaoui)という振付家による作品。ロンドン、アントワープ、東京(Bunkamura,2012年2月)の合同企画として上演された

*2:決まった型や様式に縛られず、身体、時間、空間を使って新たな表現を生み出すプロセス。振付家やダンサー同士で気づきを得ながら試行錯誤する

*3:Artist in Residence KOBE。森山未來氏らが立ち上げた、国内外のアーティストが一定期間滞在しながら作品制作やリサーチを行う、神戸・北野にある施設

*4:イタリアの島都市ヴェネチア(ベニス)の市内各所を会場とする芸術の祭典

*5:1960年代に日本で生まれた前衛的で身体的な表現様式。「暗黒舞踏」とも言われる

*6:土地や自然そのものを使って作品を提示する現代アートの一つ