日本の観客もきっと共感できるストーリー
まず、本作はどのような物語か紹介していただけますか?
色々な側面のあるストーリーですが、主人公のエヴァン・ハンセンがとっさについた嘘が、SNSというツールの力によってどんどん広まってしまい、周りも巻き込んで大事になってしまうという物語です。でも、エヴァンは悪気があって嘘をついたわけではないんです。大きな闇を抱えていたエヴァンの心が限界を迎えていたその時に、とっさに取った行動が招いてしまった出来事を描いています。
柿澤さんは本作がブロードウェイで初演された際に、台本などを取り寄せて作品のことを勉強されたと伺いましたが、どのようなところに興味を持たれたのでしょうか?
まずなんといっても、劇中の全ての曲がいいなと思いました。ミュージカルにおいて音楽はとても重要ですが、第一印象ですべての曲が素晴らしいと感じることはあまりないかもしれません。
それから、日本でご覧いただいてもきっと共感できる普遍的なテーマが描かれているところにも惹かれましたね。ブロードウェイやウェスト・エンド*1では、素晴らしい新作ミュージカルが次々と生み出されていますが、日本人の感性に合うものばかりではないと思っています。例えば、人種の問題を取り扱っている作品であれば、世界中で同じような問題は起きているけれど、ブロードウェイのあるアメリカと日本では歴史的な背景や捉え方が全く違うので、同じ作品を観ても共感しづらい部分もあると思うんです。
一方で、『ディア・エヴァン・ハンセン』で描かれているのは、学校で友人とのコミュニケーションがうまく取れないといった思春期の友情に関する悩みや恋愛について、家族の間で起きる問題であったり…。エヴァンは母親との関係もあまりうまくいっていないんです。母親からすると愛を持って接しているつもりだけど、エヴァンにはその愛がうまく伝わらなかったり…と家族についても考えさせられる場面がたくさん出てきます。こういったことは日本でも今まさに起きていることではないでしょうか。普遍的なテーマが散りばめられていて、誰もがどこか自分を重ねられるストーリーになっていると思います。
初めて舞台を観るお客様にもハマってほしい
特にどのような方に本作をおすすめしたいと思いますか?
若いお客様に観ていただけると嬉しいですね。もちろん老若男女問わず誰もが心を掴まれる作品ですが、特に若い方にもっと生の舞台に触れてほしいといつも考えているんです。
今の日本では、観劇の習慣がある人が少なくなっているのではないかと感じています。もちろんチケット代が高くなってしまっているのもあると思いますし、今はスマホひとつで好きなだけエンタメに触れられる時代ですからね。でもやはり生の観劇体験には画面越しでは伝えきれない感動があるので、是非一度感じてみてほしいなと思っています。
僕は、初めて観劇する方や初めてミュージカルを観る方に舞台の世界にハマってもらえるような作品にしようといつも心がけているんです。僕自身、初めて観た舞台がきっかけで俳優になったんです。高校の課外授業で観た劇団四季の『ライオンキング』が初観劇だったのですが、やはり素晴らしい作品には人生を変えるほどの大きなエネルギーが詰まっていると思います。それだけの可能性を持っているものですので、責任を持って毎公演を大事に舞台に立たなければならないといつも思っています。

感情と歌が噛みあった時の大きなエネルギーが魅力
柿澤さんの思うミュージカルの魅力とはなんでしょうか?
ミュージカルでは、登場人物の感情が高まった時に歌や踊りという表現になるんですが、その感情と表現がぴったりマッチしたときには、とてつもないエネルギーが生まれるんです。大きな可能性を秘めているのが魅力のひとつだと思いますね。ただ演じる側としては、とても難しいとも考えています。
お芝居に加えて歌とダンスという技術的なものが加わるので、まずその技術を体得しなければいけない。でも上手く歌おう踊ろうとして技術的な部分に囚われてしまい、芝居が疎かになってしまってもいけないんです。この人のことが好きでたまらないとか、憎くてたまらないという感情をセリフでは表現しきれないから歌になるわけです。テクニックに気を取られて根本にある感情と離れてしまうと、ミュージカルとしては成立しなくなってしまうと思います。
技術も絶対に必要だけど、“心”がやはり一番大切。そのバランスがきちんと噛み合った時には素晴らしい作品になると思います。技術的な要素をすべてクリアしながら、舞台上で一人の感情を持った人間として生きなければいけないのはとても難しいことですが、それが叶うようにいつも心がけています。
最後に、本作がミュージカル初観劇になる方に向けてメッセージをお願いします!
本作は今の日本で起きてもおかしくないようなことが描かれていて、分かりやすいストーリーと楽曲で、ミュージカルに興味を持っていただく入口にもぴったりだと思います。日本の観劇文化を若い世代の方にも担ってもらえるように、そして舞台の世界がもっと盛り上がるようにという願いを持って僕らも頑張ります。
全く勉強や予習はしなくても楽しんでいただける作品だと思いますので、気軽に劇場に遊びに来てください。服装もあまり気を使わなくても大丈夫です。もちろんデートで行くから綺麗な格好をしていこうとか、せっかくのお出かけだからおしゃれして来ていただくのは大歓迎です(笑)夏の暑い時期の公演なので、体調には気をつけて来てくださいね。劇場で座って頂いている時間が素敵な観劇体験になることをお約束します!お待ちしております!!
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プロフィール

柿澤 勇人(かきざわ はやと)
1987年10月12日生まれ、神奈川県出身。
2007年劇団四季にてデビュー。
第49回菊田一夫演劇賞、第31回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。
近年の主な出演作に、【舞台】『ボニー&クライド』『ハムレット』『オデッサ』【映画】「トリツカレ男」(声の出演)【ドラマ】「不適切にもほどがある!」「ライオンの隠れ家」(TBS)、「新東京水上警察」「全領域異常解決室」(CX)など。
1月から放送中のTBS系ドラマ「終のひと」では主人公・嗣江を演じている。
3/15に開幕するミュージカル「ジキル&ハイド」でも主演。
「Sky presents 柿澤勇人のカキノキ坂ラジオ」がABCラジオ、TBSラジオにて毎週好評O.A中。ウエンツ瑛士・木南晴夏とのユニット『カキンツハルカ』としても活動。
趣味はサウナと芋焼酎。
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■取材・文:すずき もえ
■写真:境 悠
公演情報

| 公演名 |
ミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』
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日程・会場 ▶︎お問い合わせ |
【東京公演】
2026年7月25日(土)~8月23日(日)
EXシアター有明(東京ドリームパーク内)
▶︎ホリプロチケットセンター
03-3490-4949
受付:平日 11:00~18:00 / 土日祝休
【愛知公演】
2026年8月29日(土)~9月6日(日)
御園座
▶︎御園座
052-222-8222(平日10:00~18:00)
【大阪公演】
2026年9月10日(木)~21日(月祝)
梅田芸術劇場メインホール
▶︎梅田芸術劇場
0570-077-039(10:00~13:00/14:00~18:00)
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| Webサイト |
https://horipro-stage.jp/stage/dearevanhansen2026/
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