「全てが見える生々しさを面白がってほしい」消費カロリーを競い合うお葬式コメディ(エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)『汗が目に入っただけ』俳優:鈴木保奈美さん/脚本・演出家:冨坂友さん)

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2026年4月より、IMM THEATERにて開幕するエクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)『汗が目に入っただけ』。本作主演の鈴木保奈美さん、脚本・演出を務める冨坂友さんにインタビューを実施!舞台鑑賞初心者にもおすすめのコメディ作品ですが、何やら上演中に導入される“謎のルール”があるとのこと…。気になる作品の内容や、コメディの魅力についてたっぷりお話を伺いました。

『汗が目に入っただけ』あらすじ

60歳を前にぽっくり亡くなった森井由美子(鈴木保奈美)は、霊魂として、納棺式を終えた自分の遺体を見ている。彼女の目の前には、成仏するにできない問題があった。共同で喪主を務める子供たちが、自分の葬儀のやり方をめぐって揉めていたのだ。長女(足立梨花)はキリスト教式の葬儀を準備してきたが、長男(西野創人)は仏教式でやるべきだと主張。共に「お母さんのために」と言う両者は一歩も引こうとしない。次男(小越勇輝)は仕事のトラブルでそれどころではない。さらには別れた夫(田中要次)までしゃしゃり出てくる。通夜は数時間後に迫っているというのに…。気を揉むことしかできない由美子の前に、葬儀社の担当らしき女性(蘭寿とむ)が訪ねてくる。どうやら彼女は霊である由美子のことが見えるようで…?
(公式HPより:https://www.asegameni.jp/

幽霊となった母と子のディスコミュニケーションが笑いに

冨坂さんの作品で鈴木さんが主演を務められるのは2回目とのことですが、お二人が出会われたきっかけは?

鈴木さん:私が冨坂さんの劇団「アガリスクエンターテイメント」の舞台を観て、「こんな面白いことをしている人たちがいるんだ!」とびっくりして、「いつか私もここに出させてもらえないだろうか」と思ったのがきっかけです。その時拝見したのは、最初から最後までひとつの場面で、俳優もほとんど全員が最初から最後まで舞台上にいるというシチュエーションコメディ*1でした。ものすごいスピード感でセリフの応酬が続くのですが、無駄がなくて論理が通っていて、かつ面白くて伏線が見事に回収されていって。本当によくできているお芝居だなと思いました。

それから共通の知り合いがいたこともあってご縁が繋がって、初めて一緒にお仕事させていただいたのは『生ドラ!東京は24時 -シンガロング!-』(フジテレビ系・2022年12月放送)という深夜ドラマでしたね。

冨坂さん:そうですね。ドラマの後に、舞台で初めてご一緒させていただけることになって『逃奔政走-嘘つきは政治家のはじまり?-』という舞台をやりました。女性知事が主人公のコメディだったのですが、その舞台が終わった時にはもうすでに「次はもう一段階アクティブで、もう一段階バカなコメディができたらいいな」と思っていたんです。そこで今回『汗が目に入っただけ』では、さらに変な形式のコメディをやりましょうと提案させていただきました。

今回の『汗が目に入っただけ』について、まずはどのようなお話か教えていただけますか?

冨坂さん:一言で言うと「家族のお葬式コメディ」です。成人した3人の子どもがいる母親が60歳を目前に突然亡くなってしまい、納棺が終わってこれからお通夜、という場面から始まります。お通夜まで2時間くらいしかない中で、共同で喪主を務めることになった子どもたちがお通夜の方式で揉め始めてしまい、幽霊になった母親がどうにか解決しようとするというお話です。

鈴木さんの役柄についても教えていただけますか?

鈴木さん:私は幽霊になったばかりのお母さん役です(笑)子どもたちがお葬式の相談をしているのを幽霊になって見ているんですが、みんなどうしたらいいか分からない中で「うちって仏教?宗派は?」とか「キリスト教がいいんじゃないか」とか揉め始めて。私が演じるお母さんは、子どもたちに喧嘩してほしくないし、早く決めてくれないとお通夜ができないしと焦るのですが、幽霊なので姿も見えないし声も聞こえない。そんな中で何とかしようとすればするほど滅茶苦茶になっていってしまう…。その様子を面白おかしく観てもらえるコメディになっています。

冨坂さん:幽霊になってしまったので母親の声は子どもたちには届かない。だから子どもたちが「お母さんは絶対こういうのが好きだったから、こうしてほしいはずだ」と勝手に推理してプランを組み立てるんですが、母親からしたら全く的外れ。そういったディスコミュニケーションも、お葬式に限らず家族の中ではよく起きることだろうと思いますし、ベタなコメディ感を出せるシチュエーションだと思って題材に選びました。

実は僕も同じような状況で、三兄弟の一人として共同で喪主を務めたことがあるんです。この物語のように揉めることはなかったですが(笑)その経験から、今回の作品の設定を思いつきました。

コメディの既存スタイルを新たな仕掛けでアップデート

タイトルに「エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)」とついており、この「kcal(カロリー)」とは…?

冨坂さん:今回の舞台のシステムは、どれだけ説明しても意味が伝わりにくいのですが…(笑)実は途中から、急に「出演者が消費カロリーを競う」という謎のルールが発動します。お葬式をテーマにした家族のコメディ自体は、似たような形式のお芝居が昔からけっこうあるんです。なので、今回はもう一段階面白い仕掛けを何かしようと思いまして。『汗が目に入っただけ』というお葬式コメディを上演しながら、途中から出演者が消費カロリーを競い出す…という二重構造にしました。

非常に気になります!そのような発想が出てきたのは何かきっかけがあったのですか?

冨坂さん:何年か前に、劇団のイベントで“お試し版”をやってみたことがあったんです。僕がこれまでよく作ってきたシチュエーションコメディは、元々海外にあったコメディスタイルで、日本でも三谷幸喜さんなどがこのスタイルを使って面白い作品をたくさん作ってきました。さらに僕なりにアップデートさせていく方法がないか考える中で「消費カロリーを測ったら楽しいのでは?」という思いつきでやってみたのが始まりです。

鈴木さんは、この“謎のルール”を取り入れた舞台がどのようになるかイメージできていますか?

鈴木さん:冨坂さんから構想は説明していただきましたが、まだ結局よく分からなくて「何させられるんでしょうね」と思っています(笑)でも、冨坂さんの舞台は謎のまま終わることは絶対にないので。観れば腑に落ちて「面白かったね」と思っていただけると思います。

冨坂さんは、既存のスタイルにとどまらず「今まで見たことのない新しいことができないだろうか」と常に探していらっしゃるんでしょうね。「同じことをやっていたらダメだ」と私に向かってガツンと言われたような気持ちで受け止めていますし、演劇そのものが新しいスタイルの可能性を探していくのも大事だと思っています。

冨坂さん:とはいえ、ストーリー的にはベタなワンシチュエーションコメディなので、安心して楽しんでいただけるかと(笑)実験的な演劇だと思って構えなくても大丈夫ですよ。

“笑い声”が観客と舞台の相互作用を生む

舞台だからこそ感じられるコメディ作品の面白さはどのようなところだと思いますか?

鈴木さん:うまくいかなかったところもお客様に見られてしまうのが面白いところだと思います。コメディはやはり“間”が大事ですが、間を外してうまくいかない時もあるんです。でも、それも含めて「鈴木、今外したんだな」と面白がっていただきたいです(笑)映画やテレビのような映像作品だと、撮り直したり編集したりできるので、うまくいかなかった時の姿はお客様の目には入りません。でも舞台ではそのまま全て見えてしまう。そこも含めて楽しんでいただけるのが舞台ならではだと思います。

冨坂さん:劇場で他の観客と一緒に観ると、画面越しに一人で観るよりもなぜか笑えるという効果があると思っています。出演者もお客様が楽しんでいると気分が乗ってきますし、生のパフォーマンスは観客との相互作用で変わっていくものです。特にコメディは笑い声が上がるという分かりやすい反応で場の空気が変わっていくので、お客様にとっても変化を体感しやすいジャンルだと思います。

最後に、本作をご覧になる方へ向けてメッセージをお願いします!

鈴木さん:目の前で俳優たちが汗をかいたり息を切らしたりしてドタバタしている「生々しさ」を、まずは楽しんでいただきたいです。映像作品では絶対に見られない部分なので、面白がっていただければと思います。

冨坂さん:他では観られないようなコメディ作品になると思います。面食らうこともたくさんあると思いますし、人には説明しづらいかもしれないですが(笑)「なんだか変なものを見たぞ」と楽しんでもらえると思うので、ぜひ劇場にお越しください。

www.youtube.com

プロフィール

鈴木 保奈美(すずき ほなみ)

1966年8月14日生まれ。東京都出身。1986年のデビュー以降、数々のトレンディードラマに多く出演。『東京ラブストーリー』(91・CX)で大ブレイクを果たした。『家族ゲーム』(13・CX)で第23回TV LIFE年間ドラマ大賞2013助演女優賞、第17回日刊スポーツ・ドラマグランプリ・春ドラマ助演女優賞を受賞。BSテレ東にて、読書エンターテイメント「あの本、読みました?」にレギュラー出演中。近年の出演作に、【舞台】『逃奔政走-嘘 つきは政治家のはじまり?-』(24)、『レイディマクベス』(23)、『セールスマンの死』(22)、【映画】『ミステリと言う勿れ』(23)、『唐人街探偵 東京MISSION』(21)、【ドラマ】『スキャンダルイブ』(25・ABEMA)、『人事の人見』(25・CX)、『プライベートバンカー』(25・EX)、『生ドラ!東京は24時 -Starting Over-』(24・CX)、『フィクサーSeason2』(23・WOWOW)、『南海トラフ巨大地震』(23・NHK)、『生ドラ!東京は24時 -シンガロング!-』(22・CX)など。

冨坂 友(とみさか ゆう)

高校卒業後、オリジナルのシチュエーションコメディを創作するためにアガリスクエンターテイメントを結成し、地元の公民館で演劇を開始。その後、東京の小劇場に拠点を移して活動。ワンシチュエーションでの群像コメディを得意とし、緻密な伏線回収と、俳優の魅力を最大限引き出す宛て書き、奇妙な設定や物語で大きな笑いを生み出す。代表作『ナイゲン』は全国の演劇部や劇場のプロデュース公演として数多く上演され、『SHINE SHOW!』は東宝のシアタークリエ公演として上演。2022年末に手がけた『生ドラ!東京は24時-シンガロング!-』(CX)は2022年度ギャラクシー賞奨励賞を受賞した。2025年には『人事の人見』(CX)にて地上波連ドラのメインライターを務める。

公演情報

公演名 エクストリーム・シチュエーションコメディ(kcal)『汗が目に入っただけ』
日程・会場
▶︎お問い合わせ
【東京公演】
2026年4月3日(金)~4月19日(日)
IMM THEATER
▶︎キョードーインフォメーション
0570-200-888(12:00~17:00 土日祝休業)

【広島公演】
2026年4月22日(水)、23日(木)
上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
▶︎TSSイベント事務局
082-253-1010(10:00~17:30 土日祝休業)

【大阪公演】
2026年5月2日(土)、3日(日)
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
▶︎キョードーインフォメーション
0570-200-888(12:00~17:00 土日祝休業)

【富山公演】
2026年5月16日(土)、17日(日)
砺波市文化会館 大ホール
▶︎富山テレビ放送 事業部
076-492-7106(10:00~17:00 土日祝休業)

【山形公演】
2026年5月23日(土)、24日(日)
やまぎん県民ホール
▶︎さくらんぼテレビジョン
0120-150-616(10:00~18:00 土日祝休業)
Webサイト https://www.asegameni.jp/index.html

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subscription.recri.jp

*1:コメディのジャンルの一つ。基本的に一つの場面で展開され、主要な登場人物の入れ替わりもなく、状況設定が生み出す食い違いや誤解が笑いの要素となっている