現実のアリスと童話の中のアリスが共存する
まずはお二人それぞれの役柄について紹介いただけますか?
麻実さん:私が演じるアリス・リデル・ハーグリーヴスは、「不思議の国のアリス」のモデルになった人物です。世界的な児童文学の主人公として幼少期を過ごした一方で、大変厳しい人生を歩むことになった人でもあります。この舞台に登場するアリスは、人生の終幕を迎えようとする年齢です。ここに至るまで人生の厳しさにたくさん遭遇したと思いますが、彼女からはむしろ老いることの穏やかな喜びのようなものも感じます。 私自身にとっても、非常に良い時期に晩年のアリスという役をいただけたので、頑張りたいなと思っています。
古川さん:私の役柄は、皆さんがよく知っている「不思議の国のアリス」という童話の主人公・アリスです。ただ、おとぎ話の中のアリスのイメージだけではなくて、実在したアリス・リデル・ハーグリーヴスさんの存在を映している部分もある と感じています。そこを自分の中でどう捉えていったらいいか、まだ探っている状態です。
俳優という仕事にもある“影”の存在
現実世界のアリスと、物語の中のアリス、2人の「アリス」が登場するということですが、その関係性についてどのようにお考えですか?
古川さん:演出の熊林(弘高)さんが、一つヒントとしてくださったのは、“影”という言葉です。 実在のアリスさんは、子どもの時に物語の中のアリスという“影”をもらったとも言えるし、キャラクターとしてのアリスの存在の方が大きくなってしまって、反対に実在のアリスさんが“影”のようになってしまったとも言える…。いったいどちらが“影”なんだろう、ということを考えさせられるお話 です。
私が演じるアリスって、実在のアリスさんがおそらく言われたくないことを容赦なく言う存在というか、アリスさんが本当は向き合いたくないと思っているものを見せてくる存在でもあるんです。一言ではまとめられないような、大きな役目を担っていると感じます。
自分がその役目に対峙することに少し怖さも感じますが、“影”の存在があるというのは、役者という職業に近い気もしています 。私は、自分自身や他の人が持っている“役のイメージ”を背負って仕事をしている部分があって、それがイメージの自分なのか本当の自分なのか、今外に出ているのはどちらなのか分からなくなるような時があります。麻実さんにもこの物語に共感する部分がたくさんあるのかなと思うんですが…麻実さんは、どうですか?
麻実さん:そうですね…本作では表裏一体でもある2人のアリスが会話の中で度々衝突し合うのですが、それを嫌だとは思っていないんじゃないかと思います。自分の分身のような存在である子ども時代の姿をしたアリスと、ずっとそうやって会話しながら生きてきたのではないかと。ある時はぶつかり合い、ある時は支え合うようにしながら、一緒に成長してきたんだと思います。
そんなアリスの言うことを素直に受け止めながら、こちらはこちらで好きな言葉を投げかけているというやり取りが面白いですね。私が演じる実在のアリスにとって、琴音さんが演じる物語の中のアリスは、影のような分身のような、あるいは姉妹だったり娘のようにも感じる、不思議なところに立っている存在です。
自分の身体と心を頼りに演じ切る
お二人の思う生の舞台の魅力を教えていただけますか?
麻実さん:生の人間が演じるものを、劇場へお越しくださったお客様と同じひとつの空間で演じ切る というのが、舞台の素敵なところなんじゃないかと思います。映像のように、編集でカットしたり繋げたりもできないので、もう幕が開いたら自分の身体と心を頼りに演じ切るしかない んです。お客様の気持ちがこちらを向いてきたとか、ちょっと離れてしまったかもとか、全部その場の空気から感じ取れるんですよね。そんな緊張感のある中で得られる満足感は、他にはないものだと思います。
古川さん:私がお芝居を始めたのは中学校の演劇部に入部したことがきっかけでした。その時は、まさかここまで続くとは思ってなかったんですけれど。やっぱりお芝居をするのが好きなんだと思います。これまで 舞台を観に行った経験から考えると、劇場に足を運ぶということ自体が、一つ大きな魅力ではないかと。劇場に行くと、目に見えないものもたくさん感じられるんです。例えば、テレビを通すのとはまた違った迫力が生の空気の振動を通して伝わってくる のとか。
去年、海外の舞台を初めて観に行った時に気づいたこともあります。イギリスで一番古いとされる劇場に舞台を観に行った時に、外観は建て替えで新しくなっていて「あれ?」と思ったんですが中に入ってみると、建て替える前の昔の壁がそのまま残されている部分もあって、新旧融合のような、歴史のつながりを感じる劇場だと思いました。
一方で、同じロンドンにはシェイクスピアのグローブ座のような、照明はロウソクで音響は全部生演奏でという、ずっと昔からの舞台のあり方を受け継いでいる劇場もあって。現在と過去の時間の繋がりを空間ごと表現しているのが劇場 なんだなと思っています。
本作が観劇デビューになる方に向けてメッセージをお願いします。
麻実さん:舞台は生のものなので、同じことは絶対できなくて、その時々の状況や体調もあるし、お客様側の状況もあるけれど、精一杯お客様にお見せするしかない。でも、そのやり直しのきかなさが生の世界の魅力でもあり、その世界に生きられる私たちは幸せです。お客様にもその幸せに触れてほしいと思っています。 多くの方に舞台に足を運んでいただいて、生の人間が丁寧に演じるドラマの世界観を感じていただきたいです。
古川さん:この作品に出てくる言葉は詩のようだと感じていて、詩のようにたくさん余白があるからこそ、皆さんが感じたいままに感じられるように導いてくれる作品 だと思います。私自身台本を読んでいて「難しいな」と思うところもありますが、役者が動くことで分かりやすくなると思いますし、舞台美術が誘ってくれることで物語の世界に入り込みやすくなる部分もあります。まずは、あまり難しく考えずに劇場へ来て五感で受け止めてみてくださったら嬉しいなと思います。
VIDEO www.youtube.com
プロフィール
■麻実れいさん
ヘアメイク:本名和美
■古川琴音さん
ヘアメイク:伏屋陽子(ESPER)
スタイリスト:山本杏那
麻実 れい(あさみ れい)
3月11日生まれ、東京都出身。1970年宝塚歌劇団に入団。雪組トップスターとして活躍し、85年退団。以降、ミュージカル、古典、翻訳劇など多くの話題作に出演、『オイディプス王』『タイタス・アンドロニカス』『AOI/KOMACHI』など海外公演も多数。読売演劇大賞最優秀女優賞(96、11)、松尾芸能賞演劇優秀賞(97)、紀伊國屋演劇賞個人賞(01)、毎日芸術賞(02)、芸術選奨文部科学大臣賞(04)、紫綬褒章受章(06)、朝日舞台芸術賞(06)、菊田一夫演劇賞大賞受賞(17)、旭日小綬章受賞(20)など受章多数。 主な出演作に、『ハムレット』『二十世紀』『サラ』『トップ・ガールズ』『サド侯爵夫人』『夏の夜の夢』『おそるべき親たち』『炎・アンサンディ』『8月の家族たち August Osage County』 『罪と罰』『森・フォレ』『ガラスの動物園』『みんな鳥になって』などがある。日本芸術院会員を務める。
古川 琴音(ふるかわ ことね)
1996年10月25日生まれ、神奈川県出身。2018年にデビューし、短編映画「春」(18)では第20回TAMA NEW WAVE コンペティションでベスト女優賞を受賞し、第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した映画「偶然と想像」(21)の第1話で主演を務める。その他主な出演作に、映画「街の上で」(19)、「言えない秘密」(24)、「Cloud クラウド」(24)、ドラマ「エール」(20/NHK)、「アイドル」(22/NHK)、「どうする家康」(23/NHK)、「海のはじまり」(24/CX)、舞台『世界は一人』(19)、『INTO THE WOODS -イントゥ・ザ・ウッズ-』(22)などがある。舞台『Touching the Void タッチング・ザ・ヴォイド ~虚空に触れて~』(24)では第32回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。待機作に、声優に初挑戦した長編アニメーション映画「花緑青が明ける日に」(26年3月6日公開予定)がある。
公演情報
公演名
ピーターとアリス
日程・会場
【東京公演】
2026年2月9日(月)~2月23日(月・祝)
東京芸術劇場 プレイハウス
【大阪公演】
2026年2月28日(土)~3月2日(月)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
Webサイト
https://www.umegei.com/peteralice2026/
主催
企画・制作・主催:梅田芸術劇場
共催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場(東京公演)
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