純粋だからこそ狂ってしまった姉妹の絆
ミュージカル『白爪草』はどのような作品なのでしょうか?
唯月さん:人間誰もが実は持っているような、歪んだ部分や負の部分が原動力になって進んでいく物語です。ちょっと怖くて不気味な作品でもあるんですが、もしかしたら「この気持ちわかる」と思ってくださる方もいるのではないかと 。愛が深いが故に歯車が狂ってしまうという家族の絆の複雑さを描いた物語でもあるので、お客様に共感してもらえるところも多いんじゃないかと思っています。
屋比久さん:登場人物が女性2人だけのミュージカルってあまりないですよね。その2人が双子の姉妹でお互いを知り尽くしているからこそ、会話を交わすだけで心理戦が進んでいく…というドキドキ感を味わってもらえる と思います。今までのミュージカルにはない作風だからこそ、ミュージカルを見慣れていない方でも楽しんでいただける作品だと思います。
音楽はシンガーソングライターのヒグチアイさんが作ってくださったんですが、彼女自身のアーティストとしての色を残しつつ、作品の中に美しく溶け込む曲になっています。私の中では、音楽を聴くだけでもこの作品の風景が浮かんでくる ようになりました。
お2人それぞれの役柄についてご紹介いただけますか?
唯月さん:私が演じる双子の姉「紅」は、最初の登場シーンから不思議な空気をまとっているように見えると思います。突拍子もないことをしたり、斜め上の発言をしたりすることもあるんですが、なぜ彼女がそうなったのかを後々知っていくと、すごく抱きしめたくなるようなキャラクター です。彼女が思い描いていたものが壊れてしまった時に、純粋で繊細な彼女自身の心も壊れてしまったんだろうなと思っています。
屋比久さん:私が演じる妹の「蒼」は、常に優等生のように振舞っていて、間違わないように真っ直ぐに、一生懸命生きてきた子です。でも実は多面性があるキャラクターで、会話の中での辻褄の合わなさとか違和感のようなものを通して、独特な部分を持っているのが見えてくると思います。紅も蒼も本当に純粋だからこそ、何かがずれてしまったまま2人の人生が進んでいってしまった のかもしれないですね。
合わなそうな色も持ち寄ってカラフルな作品に
「2人だけ」でのミュージカルという点については、どのように感じていらっしゃいますか?
唯月さん:2人しかいないので、相対的に自分から放出しなくてはいけない熱量が多くなると思います。その分すごくお客様との距離感が密になるので、お客様が「ただ観ている」という感じではなくて、一緒に同じ世界に入り込める感覚があるかな と思っています。私はまだ2人芝居をやったことがないので、想像でしか伝えられないですが、そういうイメージを持っていますね。
屋比久さん:私も2人芝居は初めてなんですが、もっと多くの登場人物がいる群像劇だと、人がいるというだけで物語が分かりやすく見えるし、空気感を作りやすいところがあると思います。今回は2人だけで作り上げないといけないので、私たちの存在感というか、舞台上で説得力を出すのも挑戦の一つ だと思います。あとはずっと舞台にいるから集中力を保たないと。お客様に集中力を保ってもらうためにも、私たちがどんどん引っ張っていかなきゃという責任は感じますね。
唯月さん:本当にそうだよね。2人ともほとんどずっと舞台に出てることになりそうだし…沸騰しちゃいそうだね、私たち(笑)
屋比久さん:オーバーヒートしそう(笑)
脚本の福田響志さんや演出の元吉庸泰さんなど、スタッフ陣にも若手クリエイターの皆さんが揃っていますが、チームの雰囲気はいかがでしょうか?
唯月さん:同じ土俵で話せるというか、意見交換が活発にできそうだなと思っています。「みんなで一緒に作品を作っていく」というのをより実感できる かなと。
屋比久さん:私も同じように感じています。オリジナル作品の初演ということもあり、「みんなで作っていこう」という空気が流れているのはありがたいですね。全員で一つの色に揃えるというよりも、皆さんが個々の色を持ち寄ってきて、合わなそうな色も一緒にすることで一つの作品になっていく という印象です。この公演のポスターのような、カラフルな感じになったらいいなと思いますし、私自身の色もちゃんと持っていけるようにしたいです。
俳優と観客が同じ場所にいるのを楽しむ
お二人の考える「ミュージカルの魅力」を教えていただけますか?
唯月さん:自分が好きな作品や世界観に入り込んで、非日常を味わう濃密な数時間を過ごせる のが魅力だと思っています。生のミュージカル以外ではなかなか味わえない時間ではないかな。
屋比久さん:シンプルに音楽があるということが大きな魅力だと思います。例えば、言語が違う国の作品でも、音楽は純粋に楽しむことができるとか。お芝居だけの舞台も大好きですが、音楽に感情や心情を乗せることで、お芝居だけよりも伝わりやすくなる時もある と思っています。
ご自身の初めて観たミュージカルの思い出はありますか?
唯月さん:初めて観たのは『ライオンキング』ですね。確か中学生の時に、学校の芸術鑑賞会で観ました。ディズニーの映画を観たことはあったんですが、生のミュージカルでは「わぁ、動いてる!」っていう感動というか、満足感がすごくありましたね。目の前で物語が動いている迫力というか、“圧”を感じました 。
屋比久さん:私も『ライオンキング』でした!私は沖縄出身なんですが、家族がコンサートとかミュージカルによく連れて行ってくれて、5歳くらいの時に東京に観に来て激ハマりしました。元々歌うことも踊ることも好きだったから、自分が好きなものが組み合わさってこんなふうになるんだ!という衝撃 で、その日からずっと『ライオンキング』に出てきた歌を歌ったり、動物の動きを練習したりしてました。母がバレエの先生だったから、厳しめに指導が入ったのを覚えています。
唯月さん:かわいい!やっぱりこの仕事は天職なんだね。
屋比久さん:憧れはあったけど、まさか本当に出る側になるとは思ってなかったよ(笑)
唯月さん:私はミュージカルに出演するようになってから、ミュージカルの世界にハマったんです。もっと前から知っておけばよかったなと思うくらい、今では虜になっています!昔の自分に伝えられるなら「もっと真面目に観ておきなさいよ」って言いたいかも。
最後に、本作が初めての観劇になる方へメッセージをお願いします!
唯月さん:今回私たちが演じる姉妹は感情のままに動くところが多いので、彼女たちの気持ちになりきって観てもらう と、どうしてそういう行動をするのかが分かりやすいと思います。どちらか一人の視点で観てみようと決めてみると、より作品に入り込みやすいかもしれないですね。2人だけのミュージカル、どんな舞台になるのか楽しみにしていただけると嬉しいです!
屋比久さん:広くない空間でのお芝居なので、私たちとお客様が同じ場所に一緒にいるという感覚になれると思います。私たちも皆さんの存在を感じるし、皆さんにも私たちの存在を近くに感じていただくことで、よりリアルな体感を純粋に楽しんでもらえたら嬉しい です。楽しみ方に正解はないので、あまり難しく考えずにスリルとかドキドキ感を味わったり、謎解きしてみようかなという気持ちで来てください!
プロフィール
屋比久 知奈(やびく ともな)
1994年沖縄県出身。琉球大学法文学部国際言語文化学科英語文化専攻卒業。2017年3月に全国公開されたディズニー・アニメーション映画『モアナと伝説の海』ヒロイン・モアナ役の日本版声優を務め、主題歌「どこまでも~How Far I’ll Go~」を歌唱しデビュー。主な舞台出演作に、『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役(19,21,24-25年)、『ミス・サイゴン』キム役(20,22年)、『ジェーン・エア』ジェーン・エア役/ヘレンバーンズ役(23年)、『ひげよ、さらば』星からきた猫役(23年)、『VIOLET』ヴァイオレット役(24年)、『三銃士』コンスタンス役(24年)などがある。24年12月に全国公開された『モアナと伝説の海2』が前作を越える興収と動員数を記録し、大ヒットを収めた。只今、Disney+にて見放題配信中。2026年3月より、ミュージカル『どろんぱ』に出演予定。
唯月 ふうか(ゆづき ふうか)
北海道出身。2012年、第37回ホリプロタレントスカウトキャラバン審査員特別賞受賞。13年にブロードウェイミュージカル『ピーターパン』9代目ピーターパンとして抜擢されて以来、数々の舞台、映像作品に出演。近年の主な出演作として、『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役(17,19,21年)、『屋根の上のヴァイオリン弾き』チャヴァ役(17-18年)ホーデル役(21,25年)、『スウィーニー・トッド』ジョアンナ役(16,24年)、『VIOLET』ヴァイオレット役(20年)、『キャメロット』グィネヴィア役(23年)、『天保十二年のシェイクスピア』お光/おさち役(20,24-25年)、『ジェイミー』プリティ役(25年)などがある。現在『SPY×FAMILY』に出演中、26年には『ジキル&ハイド』への出演が控えている。
公演情報
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