2025年11月、サンシャイン劇場で上演されるタクフェス第13弾『くちづけ』。作・演出を務め、出演者でもある宅間孝行さんにインタビュー!タクフェスとは、宅間さんが主宰する「楽しめる、グッとくる、盛り上がれる!」をモットーとしたエンターテインメントプロジェクト。2010年の初演から多くのファンに愛され続ける本作は、舞台鑑賞初心者にもおすすめのポイントがたくさん。宅間さんに、作品に描いたテーマや生の舞台の魅力、タクフェス作品の楽しみ方について伺いました!

価値観がひっくり返るような体験をしてほしい
『くちづけ』という作品についてご紹介いただけますか?
知的障がいを持つ人たちが暮らすグループホーム「ひまわり荘」が舞台で、そこに集まる人たちの悲喜こもごもの物語です。漫画家の愛情いっぽんが住み込みで働くことになり、障がいを持つ一人娘と一緒に移り住んでくるのですが、その2人を中心に、他の入居者や周りの人たちの交流を描いています。あるとき事件が起きるのですが、いったいなぜそんな事件が起こってしまったのか…その理由が結末に描かれています。実は、僕が昔ある事件の記事を見かけたことがきっかけで作った作品です。

この作品を通して伝えたいテーマはなんでしょうか?
中心となるのは親子の絆の話です。「親が子どもを思う気持ちは非常に尊い」ということが、一番根底にある伝えたいテーマですね。扱っている題材としては、知的障がい者の方が置かれている現状なども書いています。そのような現状について「知らない」ことこそ一番の問題なのではないかと思い、少しでも知ってもらえるきっかけになるようにと、この作品を書きました。
社会問題的な部分に興味がない人こそ、価値観がひっくり返るような体験ができると思いますが、深刻な話を扱っているんだなと身構えすぎずに観に来ていただきたいです。間違いなく心が動かされる話ではありますが、基本的には楽しんで観てもらいたいと思って作っています。
観客は歴史的瞬間の目撃者になれる
『くちづけ』は度々再演されているので、観劇前にあらすじを調べて予習しておくこともできますが、宅間さんとしては事前に予習しておくのがおすすめでしょうか?
難しい話ではないので前情報はなくても大丈夫だと思いますが、舞台に興味を持っていただけるきっかけにはなるかもしれません。この作品は映画にもなっているので、それを観てから「舞台も観たい」と思って来てくださるお客さんもいるんですよ。
伏線をたくさん張っている話なので、二度、三度と観てもらうと全く観え方が違うとは思います。実際、何度も観てくださってる方も多くて、オープニングのプロローグのシーンで、すでに鼻をすすっているお客さんが大勢いる…なんていう日もあります。何度観ても楽しめる作りになっているので、何回も観ていただけると嬉しいですね!
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2010年の初演から続けて出演されていた金田明夫さん(愛情いっぽん役)と宅間さん(うーやん役)のお二人が、今回最後の出演になると伺っています。卒業となった理由を教えていただけますか?
年齢的なところが一番です。金田さんは今年70歳になられるんですよね。この作品はありがたいことに評判が良く5年に1回のペースで再演できているので、次があるとしたら75歳。まだまだお若いので今後もやっていただけるのではという気持ちもあるのですが、今回を一区切りとしました。実は、僕は前回(2020年)の公演で最後の出演にしたいと思っていたんですが、金田さんが「一緒にやろうよ」と言ってくださったのと、コロナ禍で公演数を絞ってあまりお客さんに観てもらえなかったので、リベンジの意味も込めて最後にやろうということになりました。
演劇や音楽のライブを観ていると「歴史に立ち会う」瞬間があるんですよね。スポーツの試合でも「あの試合を生で見たんだ!」と言われるような、伝説として語り継がれる瞬間があると思うんですが、演劇にも同じようなことがあると思っていて。 まさに今回の『くちづけ』は、金田さんと僕が出演する最後の上演ということで、作品として1つの区切りを迎える歴史的瞬間になるのではと思います。『くちづけ』の歴史の大きなポイントに立ち会っていただきたいですね。
時に「失敗する」のも舞台の面白さ
宅間さんの考える「舞台の魅力」とはどういったところでしょうか?
あえて言わせていただくと、「失敗すること」ですね。映画やドラマだと編集でミスを隠したりミスがなかったかのように見せたりできますが、演劇だとそれはできません。演劇というのは、2時間ほどの作品のために、たくさんの人が1ヶ月も集まって一生懸命稽古をして作り上げます。それでも、人間なのでミスをしてしまったりセットが壊れてしまったりと、アクシデントが起きることもあります。
そういったアクシデントすらも、その時1回しかないという「ライブ感」が面白みにつながるんです。僕も長くやっていて、とんでもない失敗やミスをしたこともありますが、失敗した時の方が盛り上がることもあるんですよね。完璧ではなくても、まさにここでしか起こっていないというライブ感で、お客さんが喜んでくれるところもあると思います。
あとは、毎公演お客さんと一緒に作るものだというところも、生の舞台だからこその魅力ですね。客席の雰囲気が固ければこちらも緊張したり、お客さんのノリが良い回はこちらもノリが良くなっていく。僕の作る舞台では、お客さんと双方向の関係性を大切にしているので、日々同じものをやっているつもりでも、お客さん次第で全く変わっていきます。

「作品を観る」だけではない価値を渡したい
タクフェスならではの「他の舞台にはない!」というアピールポイントはありますか?
お客さんを緊張させないように、楽しんでもらうための空間作りを一生懸命やっています。演劇独特の緊張感が「演劇って敷居が高い」と思わせる原因になってしまっている部分もあるのではないかと思っていて。
僕の舞台では、むしろ「こんなに気楽に観ていいんだ」と感じてもらえるようにしているので、初めての観劇にも最適だと思いますよ!例えば開場中に「前説」を必ずやって、リラックスしてもらう時間を作っています。僕たちが開演前に出てきて、役者の私物をお客さんにプレゼントしたりジャンケンしたり、クロストークをしてみたり…。色々しているので、開演の20分前から来てもらえるとより楽しめると思います。 本編中も、お客さんが写真撮影していい時間を作ったり、客席に降りてお客さんの近くまで行ったり、楽しんでもらえるように趣向を凝らしています。終演後にも、アフタートークやちょっとしたライブのようなこともやっています。
お芝居って本来、エンターテインメントとして楽しめる要素があって然るべきだと考えているので、「作品を観る」以外の価値も大事にしています。「舞台を観に行く」って、チケット代だけではなくて、わざわざ劇場に足を運んだり、パンフレットを買ったり、前後にご飯を食べたりと、手間とお金がかかるイベントなんです。僕らはそうしてもらうだけの「価値」をきちんと渡さないといけない、というのはすごく意識しています。
最後に、タクフェスの作品を初めて観る方や、劇場に足を運ぶのが初めてという方へメッセージをお願いします!
劇場への初めの一歩を踏み出そうという方にこそおすすめしたい、お客さんに楽しんでもらうことだけを考えて作ってきた作品です。お客さんが楽しんでくれるからこそ、僕らも楽しめます。なので、皆さんもやる気満々でいらしていただきたい(笑)こちらも望むところという気持ちでお待ちしています!

プロフィール
宅間 孝行(たくま たかゆき)
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| 公演名 | タクフェス第13弾『くちづけ』 |
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| 日程・会場 ▶︎お問い合わせ |
【富山公演】 2025年11月24日(月祝) 新川文化ホール ▶︎キョードー北陸チケットセンター:025-245-5100 火~金12:00~16:00/土10:00~15:00(日月祝休) 【東京公演】 2025年11月28日(金)~12月7日(日) サンシャイン劇場 ▶︎サンライズプロモーション:0570-00-3337 (平日12:00~15:00) 【名古屋公演】 2025年12月12日(金)~12月14日(日) アマノ芸術創造センター名古屋(名古屋市芸術創造センター) ▶︎サンデーフォークプロモーション:052-320-9100 (全日12:00~18:00) 【大阪公演】 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 2025年12月18日(木)~12月21日(日) ▶︎キョードーインフォメーション:0570-200-888 (平日12:00~17:00 ※土日祝休み) 【福岡公演】 2025年12月27日(土) SAWARAPIA ▶︎キョードー西日本:0570-09-2424 (日祝除く11:00~15:00) 【札幌公演】 2026年1月8日(木) カナモトホール(札幌市民ホール) ▶︎チケットインフォメーションお問い合わせフォーム https://www.ws-nt.jp/info/ |
| Webサイト | タクフェス第13弾『くちづけ』公式ホームページ | 2025年11月~2026年1月公演 |
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