人間って今も昔も変わらない
舞台『近松心中物語』について、どのような作品か教えていただけますか?
渡部さん:一組は物語の中で出会って恋に落ち、もう一組はすでに夫婦で…という二組のカップルが登場します。彼らの恋に対する周りの人たちの反応やお金の問題で、追い詰められて心中を選んでしまうまでの過程を描いた物語です。

豊田さん:「心中」という大ネタバレがタイトルにあるっていうのが、私たちの中でも話題になりましたね!
渡部さん:はい。「心中するので見に来てください!」って言いながらチラシを渡してます(笑)
豊田さん:江戸時代が舞台の物語ですが、ストーリーはとても分かりやすくて、どれだけ時代が変わっても人の感情は変わらないんだなと思います。今回は時代設定を令和に移して、服装だったり街だったりは現代のものになるんです。物語やセリフは元のままで、時代背景の部分だけ現代になることで、より人間の今も昔も変わらない部分が引き立つと思います。

渡部さん:1700年頃の近松門左衛門の3作品を元にして、劇作家・秋元松代さん(1911〜2001年)が1900年代に書いた戯曲を、さらに現代風にアレンジしてまた一捻り加えることにはなりますが、本当に人間が考えていることって本質的には全く変わらないですよね。だからこそ、何をもって「古典」というのか考えてしまいます。
『近松心中物語』も、現代の僕たちからしたら古典と感じるかもしれないですが、一体いつからが古典なのかと言われると難しいですよね。演出の堀越(涼)さんから色々ご教授いただいたり全員で勉強したり、「古典とは一体何ぞや?」と考えながら、でき得る限りの古典に挑戦しようとしています。
豊田さん:私も、何をすれば古典になるのか、ずっと考えています。古典らしい部分と現代風にアレンジする部分のバランスを探っているところですね。

休んでいるキャストはいない舞台に
時代設定を現代にする上で、難しさや面白さを感じている点はありますか?
渡部さん:現代版にアレンジする時、うまくいかないことがたくさんあるのですが、その壁がすごく面白いと感じます。壁を乗り越えるためにどうしようか考えて、思いもよらないところからアイデアが出てくることもあるのが、クリエーションの醍醐味だと思っています。台詞は秋元さんの戯曲から一言一句変えずにそのままなんですが、ト書き*1はそうはいかないんですよね。ト書きに「帯を締める」とか「胸元から懐紙を取る」とか、現代の服装だとできないことが書いてあったら、そこは僕たちがアレンジを加えることになります。
堀越さんが「台詞を喋っていないときも、休んでる人は絶対にいない舞台にしたい」と仰っていたんですが、それには僕も大賛成です。お客さんが見ているのはそのとき物語の中心にいる人物かもしれないですが、総勢約30名の出演者が、いつ誰が何をするか予想できない演出になると思います。舞台全体を観ていても見ごたえがあると思うし、僕たち二人だけに注目して観ても面白いと思うし、一度観ただけでは全部は理解しきれないようなところがあっても面白いですよね。

豊田さん:稽古場では、全員が意見を出しやすい空気を堀越さんが作ってくださっているので、楽しいです。意見を言うのが恥ずかしいと感じたり、言ったことに対して間違っていると言われたりすることもない、オープンな雰囲気が作られていますね。今後、稽古が進んでいった時に、色々な方向からアイデアが飛び出してくるんだろうなと思います。まだこれからどうなっていくか分からないこの作品を、私自身も間近で目撃していきたいです。

疑問もそのまま持ち帰ってみて
本作が初めての観劇という方に向けて、メッセージをお願いします。
渡部さん:古典の大作に数えられる一作なので、あの台詞ってどういう意味なんだろう?と思うところも多少あるかもしれません。ですが、全てが分かることが演劇の醍醐味ではなくて、あれって何だったんだろう?と疑問に思ったことを持ち帰るのも、文化・芸術に触れる一つの醍醐味だと思います。
出演者は10代の若手からベテランの方まで、多種多様な人たちがこの戯曲に真っ向からぶつかって舞台を作っているので、そこから生まれるエネルギーを劇場でそのまま受け取っていただけたらと思います。きっと面白いことがKAATの大スタジオで起きるので、ぜひ観に来てください。
豊田さん:今まで見たことないものが見られるっていうのは間違いありません。時代を超えて受け継がれる人の普遍的な気持ちや感情をぜひ感じてほしいです。映像で色々なものを気軽に見られる時代だからこそ、目の前で人間たちが必死に演じてるからこその熱量を劇場に来て感じてもらえたら嬉しいです。
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プロフィール

渡部 豪太(わたべ ごうた)
1986年生まれ。茨城県出身。舞台、映画、テレビ、広告などで活躍。2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』に出演。Eテレ『ふるカフェ系ハルさんの休日』では2016年から主演を務め人気シリーズとなる。近年の舞台出演作に、『セツアンの善人』(白井晃演出)、『ハムレット』(吉田鋼太郎演出)など。ジャズダンス、バレエ、日本舞踊など踊りを通じた身体表現も得意とする。
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豊田 エリー(とよた えりー)
1989年生まれ。東京都出身。モデルとして活動を開始し、2006年に「陽気なギャングが地球を回す」で映画初出演を飾る。これまでに映画「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」、「タロウのバカ」などに出演。2016年に舞台「ロミオとジュリエット」で、初舞台を踏む。近年の舞台出演作に、『ハリー・ポッターと呪いの子』、シス・カンパニー公演『いつぞやは』などがある。
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稽古場レポート
本番約1ヶ月前のこの日、行われていたのは台本の読み合わせ。物語終盤のシーンとなる、二組のカップルの掛け合いの様子をお届けします。「読み合わせ」とは、実際に動きをつけていく「立ち稽古」の前段階として行われるもの。キャストの皆さんが台本を声に出して読み合うことで、作品全体の理解を深め役作りを進めていきます。


まずは、渡部さん演じる忠兵衛と、豊田さん演じる梅川の掛け合いから。まさに今心中を決意しようとする、緊張感と切なさが漂うシーンです。舞台が現代になった時どのように見せればその切迫感が伝わるか、演じるお二人と演出家の堀越涼さんを中心に、様々な視点からアイデアが出されていました。
しばらく意見交換がされたあと、もう一度同じシーンを読み合わせます。声のトーンや喋るスピードなどに変化をつけることでガラリと雰囲気が変わっていました。


続いて、松島庄汰さん演じる与兵衛と、木﨑ゆりあさん演じるお亀の掛け合いのシーン。少し頼りないところがある与兵衛と彼を見守るお亀のやり取りには、コミカルな雰囲気も。掛け合いをしている二人以外からも活発にアイデアが飛び出し、堀越さんの提案に大きな笑い声が上がる場面もありました。




まだ読み合わせの段階ですが、和やかな雰囲気の中にも、すでにチームワークができあがってきている様子を感じました。ここからより一層深まっていくであろう令和版『近松心中物語』の世界に期待が高まります!
公演情報

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