「古典だからと構えなくて大丈夫」初心者も演劇通も注目するKERA版で名作を楽しむ(『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』俳優:矢崎広さん)

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2025年9月にKAAT 神奈川芸術劇場にて『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』が上演されます。演劇界のトップランナーである劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチさん(以下KERAさん)が名作『ドン・キホーテ』を脚色することで話題の作品。今回は、本作に出演する矢崎広さんに、演じ手としての作品への向き合い方や、舞台鑑賞初心者の方へのおすすめの観方を伺いました!

現代向けにアレンジされた冒険物語『ドン・キホーテ』

今回上演される『最後のドン・キホーテ』はどのような物語か教えてください。

この作品は、セルバンテスの代表作『ドン・キホーテ』という小説をもとにしたお話です。『ドン・キホーテ』は舞台だけでなく、同名のバレエ作品や、『ラ・マンチャの男』というミュージカルなど、様々に脚色されています。今回は、KERAさんの作・演出で、『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』と銘打ち上演します。今は稽古段階で固まっていませんが、KERAさんならではの『ドン・キホーテ』に対する視点と捉え方があって、現代向けのアレンジになっていくのではないかと思っています。

『ドン・キホーテ』の小説を読んでから観に行った方がいいでしょうか?

小説を読んでからじゃないと理解ができないというわけではないですが、原作の登場人物やポイントは知っておいた方が面白いかなと思います。
おじいさんが突然、「自分はドン・キホーテだ」と言い出して、冒険に出かけるという狂人のようなキャラクターであるということとか、風車が巨人だと思い込んで突っ込んで行っちゃうエピソードとか。このあたりを知っておけば大丈夫なんじゃないでしょうか。原作を知らないと、物語についていけないということは一切ないです。
「古典的な作品をやるんだ」と構える必要はないと思います。原作はありますが、また違った新しい演劇作品の感覚で、初めて観劇される方でも観やすいと思います。

【原作「ドン・キホーテ」とは?】
スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの長編小説。騎士道物語を読みすぎて現実と妄想の区別がつかなくなった郷士が、自身を遍歴の騎士と思い込み、古い鎧を身につけドン・キホーテと名乗り、やせ馬にロシナンテと名付けて冒険の旅に出る物語。近所の娘を空想上のドルシネア姫に見立てて慕い、お供のサンチョ・パンサを連れ、行く先々で奇想天外な荒唐無稽の冒険を繰り広げる。有名なエピソードに、風車を巨人と思い込み突撃する話などがある。世界中で聖書の次に読まれていると言われており、多くの作家に影響を与えた作品。 (公式HPより:https://www.kaat.jp/d/don_quixote

古典にとらわれず、KERAさんの書いた脚本に全力で向き合う

今回の作品は、古くからある有名な小説『ドン・キホーテ』がもとになっていますが、古典の小説や戯曲がベースになっている作品を演じる時に気をつけていることはありますか?

「古典にとらわれすぎない」ことです。もちろん原作の内容は頭に入っているつもりでいますが、今回KERAさんの『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』で演じる上では、そこまで重視するポイントじゃないと思っています。古典を指針にしつつ、引っ張られすぎないで、与えられた脚本の中で、全力で生きることが大事かなと。お客様が観劇後に、「これはドン・キホーテの物語だったんだね」と結果的に気づいてもらえたらって思っています。特に今回のKERAさんの現場は、「KERAさんが新しく書いた脚本を成立させる」という雰囲気があり、目の前の脚本と役にとにかく集中しています。脚本に向き合い、キャラクターを濃くしていく作業が、舞台の面白さに繋がっていくと思うんです。それを今、稽古場の皆で楽しんでいます。

原作の『ドン・キホーテ』は「狂気」と「笑い」が入り混じっている作品ですが、そんな原作にKERAさんの演出のエッセンスが加わるとどんな作品になるのでしょうか?

『ドン・キホーテ』の狂気的なところと可笑しさのバランスの中にKERAさんの面白さがたくさん詰まっているので、またKERAさんの作品を観に行きたいなと思える作品になっていると思います。他の出演者の方から、「今までのKERA作品のいろんなエッセンスが入っているような作品になっている」っていうお話を聞いて、まさにそうだなと。全て詰め込まれているお得な作品だと思います(笑)

僕は、今回初めてKERA作品に出演させていただきます。僕にとってKERAさんは、舞台の勉強をしに観にいくような憧れの演出家さんです。こうして今ご一緒して、作品づくりができていることがすごく嬉しいですし、頑張らなきゃなと思っています。

この作品の矢崎さんの役どころをご紹介いただけますか?

僕の役は、大倉さん演じるドン・キホーテと絡むシーンが多いんです。役者の先輩として憧れていた大倉さんとの絡みから学ぶことが多くて、すごく楽しいです。何をやっても面白く返してくださるのですごいなと。アドリブではなくて、決まったセリフの中で面白くしてくださるので、びっくりします。他の先輩方も、脚本を面白く立ち上げるまでのスピードが速くて驚かされている毎日です。

舞台は“密度の濃さ”が魅力

舞台でご活躍する一方で、映像作品にも出演されている矢崎さんにとって、舞台の魅力はどんなところだと思いますか?

役者やスタッフさんが「絶対に面白いものを作る」と一致団結して作品を作り上げるのは、舞台以外の現場でも同じですが、舞台ならではの良いところは何度も稽古をして精度を上げていった作品をお客様にお見せできるところですかね。舞台は、毎日のように稽古をするので、密度が濃いんです。そこがやっていて楽しいなと思うポイントです。

舞台って、生の芝居なので、お客様が目の前にいて反応があると、舞台上の空気が変わります。舞台上の空気が変わる瞬間や、お客さん全員がグッと舞台に注目して集中している瞬間など、劇場じゃないと味わえないことがたくさんあると思います。

今は、家で色々な映像作品を観ることができますが、例えば途中で宅配が来たら一旦止めて、受け取ったらまた続きを観ることができるじゃないですか。でも、劇場で観る舞台は、「ショー・マスト・ゴー・オン(The show must go on)」なので、止まらない。役者は作品が始まったら何があっても最後までやり抜くという覚悟で演じているので、緊張感があるなと思いますね。

舞台が開幕すると、演じる側は毎回同じ演技をしているつもりなのですが、その公演に来ているお客さんの反応や役者の体調で、物語は微妙に変化するみたいです。初日と千穐楽でも全然違うらしいですね。舞台によく通っているお客様は、そういうところを楽しみに観てくださっているのではないかと思っています。

俳優や劇場の情報を追ってみて、舞台を知ってほしい

「舞台はこう観たらもっと面白い!」というおすすめの観方はありますか?

作品に興味を持って、楽しんでいただくだけでも非常にありがたいことですし、素敵なことだと思っています。ただ、もう一歩楽しみ方を広げる観方として、観劇した公演で気になった俳優や劇場、主催者を深く知ってみるというのもありです。例えば、公演に出演予定の俳優さんのSNSをフォローして見てみるとか。日々のSNSをチェックしてから舞台に来ると、何も知らないで来るより、ちょっと違って見えると思うんですよ。

他にも、例えば今回はKAAT(KAAT神奈川芸術劇場)さんが主催の公演ですが、KAATのファンになって他の作品も観てみるとか。だんだん公演の主催者ごとの特徴やこだわりに気づくようになって、さらに楽しめるんじゃないかと思います。俳優や劇場、主催者など、気に入ったポイントから繰り返し作品を選んでもらい、「マニア」になってもらえると嬉しいです。幅広い視点から演劇を楽しんでいただくことで、魅力が広がっていくといいなと思っています。

この作品で舞台鑑賞デビューを果たす方にメッセージをお願いします。

KERAさんは、僕が演劇を始めた頃から、ずっと第一線にいらっしゃる方で、役者含め、玄人から素人まで全員が観に行くような演出家です。そんなKERA版の『ドン・キホーテ』、観ておいたほうがいいと思います。「最初に観劇した作品、『最後のドン・キホーテ』だった」って言えるのは、ちょっとマウントが取れて演劇ツウぶれると思いますよ(笑)

プロフィール

矢崎広(やざき ひろし)

1987年生まれ。山形県出身。2004年にミュージカル『空色勾玉』でデビュー。以降、ミュージカルからストレートプレイまで多数の舞台経験を積みながら、ドラマ、映画、ナレーション等多岐にわたり活動。近年の作品として舞台では『鬼滅の刃』シリーズ、『バンズ・ヴィジット-迷子の警察音楽隊-』、『ダーウィン・ヤング 悪の起源』、 『アメリカの時計』、『テンペスト』、『ハリー・ポッターと呪いの子』、『ボニー&クライド』、『Play a Life』など。ドラマでは、『9ボーダー』(TBS)、『法廷のドラゴン』(TX)に出演している。

公演情報

公演名 KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』
日程・会場
▶︎お問い合わせ
2025年9月14日(日)~2025年10月4日(土)
KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>
▶︎チケットかながわ
 0570-015-415(10:00~18:00)

【富山公演】
2025年10月12日(日)〜10月13日(月・祝)
オーバード・ホール 大ホール
▶︎(公財)富山市民文化事業団
 076-445-5610(平日8:30~17:15)

【福岡公演】
2025年10月25日(土)〜10月26日(日)
J:COM北九州芸術劇場 中劇場
▶︎J:COM北九州芸術劇場
 093-562-2655(10:00~18:00)

【大阪公演】 2025年11月1日(土)〜11月3日(月・祝)
SkyシアターMBS
▶︎SkyシアターMBS
 06-6676-8466(10:00~18:00)
Webサイト 『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』|KAAT 神奈川芸術劇場

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