「思い切り笑えるアットホームな人間ドラマ」ワンシチュエーションならではの没入感を劇場で味わう(『ワンマイク』劇団ホチキス脚本家・演出家:米山和仁さん/俳優:小松準弥さん、里中将道さん)

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2025年9月に新国立劇場で上演される、劇団ホチキス第51回本公演『ワンマイク』脚本・演出を務める米山和仁さんと、客演*1する小松準弥さん、里中将道さんにインタビュー! お三方が考える生の舞台の魅力から、舞台鑑賞初心者にもおすすめの本作の見どころまでたっぷり伺いました!

「明日から自分も頑張ろう」と思えた初観劇

皆さんが初めて演劇に触れた時のことは覚えていらっしゃいますか ?

小松さん:僕はこの業界に入りたての頃、ミュージカル「テニスの王子様」を初めて観劇しました。元々僕の周りには、観劇したり舞台への関心が強い人はそこまでいなくて。だから、ただの食わず嫌いというか、舞台に関する知識も何もなくて、逆に観劇にハードルを感じることもなかったんです。 実際に観劇した時に、客席と舞台上が一体化する空気というか、観客皆でその空間を楽しんでいるのをすごく感じることができたのを覚えています。テレビとはまた違う、舞台ならではの空気感。皆で思いを共有できて、また明日から生きる活力になるっていう体験をできたのは大きかったです。演じる側としても、いまだに劇場の一体感は大切にしたいなと思っています

里中さん:僕も俳優になりたての頃に、初めて見たミュージカルは「刀剣乱舞」だったのですが、もう度肝を抜かれました!生でしか伝わらないエネルギーとか、映像では伝わらないものがやっぱりその会場内にあって。不思議と元気をもらったりとか、明日から自分も頑張ろうと思う気持ちになれるっていうのは、ほんまにすごいなと思います。

米山さん:小学校5年生のときに、学年発表会で宮本武蔵の舞台の脚本・演出をやったんですよ。それが僕の処女作。その頃は、同じ学年の好きだった子に良いところを見せようと張り切っていた思い出があります(笑)

でも二人とも、完成度が高いものを最初に観られて良かったよね。観劇の最初の入り口って、大切だもんね。

小松さん・里中さん:そうですね!

小松さん:それこそ劇団ホチキスの作品も、初観劇の人が観るとしたら、演劇への導入としてはかなり良い入り口になるんじゃないかなと思います。

「楽屋の雰囲気が素敵な劇団」日本一!

小松さん、里中さんのお二人は何度か米山さんの舞台でご一緒されていると伺っています。米山さん率いる「劇団ホチキス」の印象はいかがですか?

里中さん:僕の中で劇団ホチキスは、アットホームなイメージの劇団ですね。作品にもその温かさが滲み出ているんじゃないかなと思っています。そして、劇中では絶対的におかしなことが起きているのに、なぜか奇跡的に上手いこと繋がってストーリーが進んでいくっていう特徴が(笑)

小松さん:きっと劇団ホチキスらしい「バカバカしさ」っていうのがあって、お客さんに純粋に笑って楽しんでもらえるようにという思いを、米山さんが作品に込められているのが伝わります。だから、ホチキスさんのコメディはかなり満足度が高いんじゃないかな。僕自身も楽しみにしているところです。

米山さん:もうね、「楽屋の雰囲気が素敵な劇団」日本一なんじゃないかな(笑)稽古場にも殺伐とした雰囲気を持ち込まないというのは気をつけていて。でももちろん、稽古場で全員が「面白い!」と確信したものだけを舞台上に上げるように頑張っています。

日本版「We Are the World」を作ろうという発想が発端に

今回の「ワンマイク」はどのようなお話でしょうか?

米山さん:「We Are The World」って、マイケルジャクソンをはじめとした有名な歌手を集めて一晩でレコーディングしたっていう逸話がある、有名な曲がありますよね。今の日本でそれが行われたらどうなるのかなっていう発想が発端です。

日本版「We Are the World」を作ろうという企画で、収録が行われるスタジオに、アーティストたちや、曲を作った人、さらに招かれざる客が集まって…。それがワンシチュエーションの中でほぼノンストップで展開されるというお話です。

ワンシチュエーションというのは、場面転換がなく、同じ一つの場所、今回はスタジオで展開される形式です。場面転換の手法には、暗転や照明の切り替えなどがあるんですが、あえてそれを封印して1ヶ所のみでストーリーを進めます。

この形式って、観劇初心者でも結構観やすいんですよね。今どこの場所なんだろうとか、過去・現在・未来の時間軸で今はいつなんだろうと迷うことがない。つまり、情報が整理されているので、観る側は没入感を感じられるはずです。演劇の魅力ってワンシチュエーションに詰まっていると思います。

逆に、劇作としてはなかなか難しいんですよね。単調になりがちだからこそ、脚本の力がすごく試される。手に汗握る展開がありつつ、いつの間にか登場人物たちが一致団結して、最後にばーんと歌い上げる、そんな人間ドラマです。

葛城・藤井寺、二人の真逆の成長曲線は見どころ

今回小松さん・里中さんのお二人が演じる役について教えていただけますか?

小松さん:この作品では、過去にバンドを組んで同じ夢を目指していたけれど、進んだ道の違う二人が描かれます。成功して音楽の道に進んだ藤井寺涙(ふじいでら なみだ)と、夢叶わずスタジオ経営をする葛城兼光(かつらぎ かねみつ)。

僕は、スタジオの管理人・葛城を演じます。将道の演じる藤井寺とバンド活動をしていた頃にお世話になった、スタジオのオーナーから譲り受けたという設定です。 葛城は、バツイチで娘がいる設定なんですが、スタジオをどうやって経営していくか悩みながら、娘にかっこいい姿を見せるために嘘をつくのか、真実を見せるのかの葛藤も抱えていて。そんなところに人間味を感じて、共感してもらえるんじゃないかなと思います。

米山さん:そうそう、すごく人間くさい役だと思いますね。今ってアーティストを一気に集めて大きなスタジオで収録するとお金がかかるから、個別で収録して後から繋いじゃうんですよ。だから、大きなスタジオは経営に困っているわけなんですけど、葛城はそれをなんとかしようと幽霊騒動をでっち上げて注目を引いて…っていうようなタフさもあるキャラクターです。かつ、仕事場に娘が仕事を見に来るから、ちょっといい格好しようとする人間くさい部分もあります。

里中さん:僕の演じる藤井寺は、かつて葛城とバンドを組んでいた、音楽プロデューサーです。「We Are the World」を録ろうと、アーティストが一気に集まれるような大きなスタジオを探していて、貸してほしいと頼みに行ったところ、久々に葛城と再会します。

米山さん:葛城と藤井寺が別々の道に行ったのは、藤井寺の完璧主義者が原因だったんですよ。でも久々に会った藤井寺は、社会に揉まれてイエスマンになっていて。土下座するわ、みんなに良い格好するわ。それを見た葛城が「お前そんなんじゃなかったじゃねえか」って奮い立たせる場面があります。

葛城は、一度は諦めてしまった夢を見つめ直すことで成長するし、藤井寺は、夢を叶えたことで失ったものがある。その二人の真逆の成長曲線は見どころかなと思います。

今台本を書き進めているところなのですが、「小松くん・里中くんが演じるとどうなるかな…」と想像しながら書いています。二人とは同じ現場を何度も踏んでいる仲間なので、もはや劇団員のように思っています(笑)

演劇の見方はお客さん自身に委ねられている

お三方にとっての演劇の面白さ・楽しむためのポイントを教えてください。

小松さん:僕が思う、舞台ならではの楽しみ方の1つに、好きなところを見られるというのがあります。映像だと決まったカットを見るものですが、舞台だと例えば、「葛城が喋ってる時に藤井寺はどういう表情で聞いてるのか」とか自分が気になったところを好きな目線で楽しめます。毎公演ちょっとずつ違うところがあったり、その日にしか感じられない空気感もあるので、自由に楽しんでもらえたらいいなと思います。

里中さん:特にホチキスさんの作品は、構えることなく、フラっと来ても笑えるようなところばっかりで、心軽く観られると思います。その上で最終的に素敵なメッセージがあって、元気に帰れる。同じシーンとかでも全然違ったりするので、何度観ても楽しんでいただけると思います。

米山さん:誰かに聞いたのですが、映画は監督のものだから監督が見せたいカットをお客さんに見せる。だから編集が入る。演劇は役者のものだから、編集は入らないけど、稽古場で皆で一緒に作って演出家が役者に全部託すのだと。 さらに、演劇はお客さんが監督です。推しをずっと目で追いかけてもいいし、全体を観ても良いし、カット割はお客さん自身に委ねられている。だから、何回観てもいいんですよね、演劇は。

最後に一言お願いします!

小松さん:この作品には、人生の活力になるようなもの散りばめられていると思います。稽古期間で色んなものを出し合って試行錯誤して、より良いものを作っていきますので、是非劇場に足を運んでいただけたらと思います。観に来てくれた皆さんの人生を豊かにする作品になるよう頑張ります!

里中さん:気楽に観に来て、笑って、元気になって、「明日も頑張ろう」っていう風に1人でも多くの方に思ってもらえたら嬉しいです。腹抱えて、涙が出るぐらい笑ってもらえるように頑張りますので、是非来てください。

米山さん:今回はものすごい仕掛けをたくさん用意しているので、きっと面白い作品になるはずです。手を叩いて笑っているうちに、どんどん色んな感情が湧いてくる、ジェットコースターのような舞台を用意してお待ちしています!

プロフィール

小松 準弥(こまつ じゅんや)

1993年12月23日宮城県石巻市生まれ。 2021年『仮面ライダーリバイス』にて、門田ヒロミ・仮面ライダーデモンズ役としてドラマ初出演。 舞台は 「舞台 刀剣乱舞 天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」(2021)「舞台 刀剣乱舞 无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-」(21)歌劇『桜蘭高校ホスト部』(22)「呪怨 THE LIVE」(23)「朝日のような夕日をつれて2024」(24)「超ハジケステージ☆ボボボーボ・ボーボボ」(24)「反乱ボヤージュ」(25)など。

里中 将道(さとなか まさみち)

1994年4月14日生まれ。大阪府出身。主な出演作品に 『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』躑躅森盧笙役、ミュージカル「黒執事」~寄宿学校の秘密~ロレンス・ブルーアー役、舞台「サイボーグ009」アルベルト・ハインリヒ役、舞台「WIND BREAKER」十亀条役、などに出演。

米山 和仁(よねやま かずひと)

劇作家 脚本家 演出家 監督 劇団ホチキス主宰 大手メーカー宣伝マンを11年務め、新聞広告、TVCM、WEB広告など、ブランドコミュニケーションの最前線で活躍。退職後劇団を法人化。現代劇、時代劇、ミュージカル、アニメ・漫画原作の舞台化など、さまざまな作品を生み出す。

公演情報

公演名 劇団ホチキス第51回本公演「ワンマイク」
日程 2025年9月23日(火・祝)~9月28日(日)
会場 新国立劇場 小劇場
Webサイト 劇団ホチキス第51回本公演「ワンマイク」
公演に関するお問い合わせ 劇団ホチキス
onemic@hotchkiss.jp

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*1:所属する劇団以外の俳優が出演すること