舞台のプロデューサーってどんな仕事?

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舞台を観るとき、多くの人が注目するのは俳優の演技や、舞台美術、音楽、照明などの「目に見える部分」ではないでしょうか?
けれど 、その舞台が企画され、観客に届けられるまでには、多くの人の努力があります。

その中心的な役割を担うのが「プロデューサー」 です。

舞台のプロデューサーは、作品の企画から、資金調達、キャストやスタッフの編成、マーケティング、収益管理まで、幅広い業務を担当します。「舞台を作る」だけでなく「公演を成功させ、次につなげる」ことが使命です。

この記事では、プロデューサーの具体的な仕事や求められること、他のクリエイターとの違いについて詳しく解説します。「プロデューサーの視点」で舞台を見てみると、新しい発見があるかもしれません!

舞台のプロデューサーとはどんな仕事?

プロデューサーと聞いて、どんな仕事を想像しますか?
あまりイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。 舞台公演においてプロデューサーという役職は、非常に重要な役割を担っています。
どんな仕事をしているのか、具体的にみていきましょう。

舞台の企画・資金調達を担う

舞台制作において、プロデューサーの一番最初の仕事は「どんな舞台を作るか?」を企画し、資金を確保する事です。

企画ではまず、舞台のテーマや観客のターゲット層を決定します。
方針の決め方は大きく二つ。「こんな作品をつくりたい!」といった構想を具体化していくパターンと、世間から求められている作品を検討し形にしていくパターンです。この企画の段階から、演出家や劇作家たちと話し合いながら詳細を詰めていくこともあります。(演出家・劇作家については後ほど触れます。)

ある程度企画が固まったら、資金確保に向けて動き出します。
舞台を上演するには、衣装・美術の制作費、キャストの出演料、会場の利用費など、非常に多くのコストがかかります。 これらに必要な資金を試算し、収益モデルを設計することもプロデューサーの大事な仕事になります。

企画・資金確保の道筋が見えたところで、公演の大きな方向性とビジネスプランが決定します。

クリエイティブチーム・キャストや劇場を選定する

続いて、舞台を実現するためのチームを作り、劇場など関係各所と契約を進めるフェーズです。

プロデューサーは、舞台制作に関わる全てのスタッフを集める役割を担います。 劇作家や演出家はもちろん、美術、音響、照明、衣装デザイナーなどのクリエイターに依頼をかけます。また、出演者のキャスティングを行い、出演料の交渉やスケジュール調整などを行います。

加えて、劇場の選定と契約も大事な仕事になります。ターゲット層に合わせ、アクセスのしやすさやキャパシティを考慮して劇場を決めていきます。 この段階までくると「誰と、どこで、どんな作品を作るのか?」が具体的になり、チームが動き出していくのです。

稽古期間~公演終了までの運営と広報活動

チームが決まると早速、作品の稽古が始まります。ここでプロデューサーの役割は「調整」と「広報」にシフト。 稽古スケジュールの進行管理、美術や舞台スタッフとの連携など、公演準備がスムーズに進むようサポート役に回っていきます。

さらに、この期間で作品のプロモーションも並行。チケットの販売進捗を確認しながら、広報・広告戦略を検討します。プロモーション専任のスタッフがいることも多いものの、広報戦略・企画の段階ではプロデューサーの助言も必要になります。

このように「舞台制作」と「プロモーション」を同時に回しながら、公演を成功へ導いていきます。当日を迎えるその日まで、様々な場面で指揮を取るのがプロデューサーなのです。

収益管理・公演後の展開を企画

公演が終わった後もプロデューサーの仕事は続きます。 まずは、収益の結果をまとめます。チケットや物販での売上を踏まえ、最終的な利益を算出し、今後の企画にも活かしていくことが大切です。

観客のフィードバック収集も欠かせません。会場でのアンケートや、スタッフへのお問い合わせを集約し、こちらも今後の作品に活かしていくことが求められます。

これらを踏まえ、再演やツアー公演、映像化などの展開を企画していきます。 一度きりではなく、次にどう繋げていくか?を考えるのがプロデューサーとしての腕の見せどころの一つです。

舞台のプロデューサーに求められること

前章ではプロデューサーの仕事内容をご紹介しましたが、その幅広さに驚いた方も多いのではないでしょうか? そんな多岐にわたる仕事をこなすために、欠かせないスキルや姿勢を見ていきましょう。

マネジメントスキル

まず初めに挙げられるのが、マネジメントスキルです。
プロデューサーは舞台の総責任者とも言える立場で、全体の進行を管理していく役割にあります。

舞台制作を成り立たせるには、はじめから最後まで多くの関係者がいますが、全体を束ねて進めていかなければなりません。 また人だけでなく、プロモーション活動や全体の収支などもトータルで見ながら、効率的にプロジェクトを進行する必要があります。

作品の完成度を最大化させつつ、あらゆる面での効率化や進捗管理をマネジメントする力が求められます。

資金調達と交渉、経営能力

プロデューサーは、資金調達を含め、舞台を“経営する”スキルも持ち合わせている必要があります。

資金調達では、スポンサーを獲得したり、助成金を申請したりなど、様々な方法を駆使して舞台に必要な資金を集めます。 交渉が必要な場面は主に、関わるクリエイターやキャスト陣、劇場などとの契約のタイミングです。 ここまでの取り決めを踏まえ、ビジネスとして興行を成立させるのがプロデューサーなのです。

そして、スポンサーやクリエイター達との関係も一度きりではなく、長期的に続けていくことを前提として進めることが大切です。

マーケティング・広報スキル

プロデューサーには、マーケティングやプロモーション関連の知識も求められます。 まず、企画の段階で定めたターゲット層をより分析し、チケットの販売戦略を立てます。販売チャネルや、割引設定などを適切に行い、鑑賞してほしい人にしっかりと情報を届けられる戦略を設計しなければなりません。 また、マーケティング戦略の一環として、グッズ展開やオンライン配信の有無など、世間の動向に合わせた施策検討が必要な場合もあります。

プロモーション面では、各種メディアへの露出を管理したり、プレスリリースなどの広報戦略を立てたりと、チケットを買ってもらうための仕掛けをあらゆる観点で検討します。 舞台の総責任者として、幅広い分野を理解しておくことが大切です。

その他求められること

以上が基本的に求められるポイントですが、もちろんそれだけではありません。いくつかご紹介していきます。 まずは、法務知識。キャストやクリエイターとの契約を交わす中で必要になってきます。例えば、衣装や舞台美術などは著作権があるためむやみにプロモーションに使用してOKとは限りません。 法律に則って、クリエイターたちの権利を守る必要があるのです。

続いて、リスクマネジメントのスキルも求められます。舞台は生もののため、当日まで何があるかわかりません。臨機応変に対応できるよう、様々なリスクをあらかじめ予測し対策を立てておく必要があります。

これらは、プロデューサーが全て専門家レベルで理解している必要はありませんが、最低限の知識を持っておくことで、よりスムーズな舞台運営につながります。

プロデューサーの役割を深掘り!

プロデューサーの他に「劇作家」「演出家」「舞台監督」などの役割がありますが、それらの違いは曖昧になりがちです。各々どんな仕事を担っているのか具体的に見ていきましょう。

他のクリエイターとの違い

まずは、劇作家の仕事について簡単にご紹介します。
劇作家は、基本的に「物語を作る」人です。想像力や対話を構成する力が求められ、「いかに観客を惹きつける物語を作るか」が腕の見せどころです。稽古にも参加し、展開に手を加えたり、セリフの微調整を行ったりもします。

続いて、演出家や、舞台監督の役割についても見ていきましょう。
演出家は、劇作家の物語を元に、演技や美術を含めた「舞台上での見せ方」を決めていく役割を持っています。

そして舞台監督は、舞台上の技術面で指揮をとり、照明や音響、舞台美術のスタッフ達を取りまとめます。リハーサルやゲネプロでは、進行管理も担当します。

プロデューサーと比較すると彼らは、より「現場」に特化して舞台を作り上げる人たちと言えるでしょう。

比較して見えてくる、プロデューサーの役割

ここで改めてプロデューサーの役割を振り返ると、クリエイティブな仕事と比較してよりビジネス面での役割が強いことに気づきます。プロデューサーの役割とは“経営的にも”興行を成功させることが求められているのです。

舞台がどんなに素晴らしい作品でも、収益が出なければ継続することはできません。 より良い作品を生み出すためにクリエイターのビジョンを尊重しながらも、現実的な規模感やビジネスプランを検討し、実行に移していくのがプロデューサーなのです。

まとめ

各章のおさらい

この記事では、舞台を作る上での「プロデューサー」という役割についてご紹介しました。

  • プロデューサーの仕事は多岐に渡り、舞台制作における総指揮官のような役割である
  • 求められる姿勢も様々で、各部署とのやりとりをスムーズにこなせるレベルの専門知識が必要になる
  • 他のクリエイターと比較して、より「ビジネス」としての成功にも注力する立場にある

なかなか目にする機会のない仕事ではありますが、プロデューサー無しに舞台が成り立たない、と言っても過言ではありません。

プロデューサー視点で楽しむ観劇

プロデューサーは、いわゆる裏方。観客としてその活躍を感じられる場面はそう多くはありません。 しかし、本記事でご紹介した内容を踏まえ、敢えてプロデューサーの仕事に注目してみると新しい発見があるでしょう。

観劇のご予定がある方はぜひ、集客方法やツアー展開などを見てみてください。「この人がプロデュースする舞台は面白い!」などの発見があれば、今後の作品選びの軸のひとつになりそうですね。